今日ほど勉強を真面目にしていて良かったと思った日はない。 続々々々々 散歩道にて 「そう、だからここのxには…。」 「おー、5が入るってわけですね!アリス先輩!」 「そうそう、佐鳥くん!できたね!」 「桐島先輩。ここの英文の訳なんですけど…。」 「あ、ここの訳はね、時枝くん。」 桐島 アリス、17歳。高校2年生。 現在嵐山さんの部屋で、嵐山隊の隊員の佐鳥くん、時枝くん、木虎さんに勉強教えています。 「いやー、やっぱりアリスちゃんにお願いしてよかったよ!」 ことの起こりは昨日の昼頃。 金曜日の午後の授業が始まろうという時間に、突然嵐山さんから連絡が入った。 連絡先を交換はしているが、毎朝会うので滅多にこういう連絡はこない。 嵐山さんからの連絡にニヤニヤしていると、友達にニヤニヤしてるぞと注意された。 『今朝言うの忘れてた。実はお願いがあるんだ。』 始まりはこうだった。 何ですか、と返すとすぐに返事がくる。 お願いの内容はこうだった。 嵐山隊には高1の子が2人と中3の子が1人いるらしく、その子達の学校のテストがもうすぐだということ。 だから明日の土曜日は嵐山さんの家で勉強会をするそうだ。 高2の子もいるらしく、その子が主に勉強を教える予定だったらしいが、急遽来れなくなったらしく、先生役がいなくなってしまい、大事件だということ。 嵐山さんは勉強普通にできるみたいなんだけど、さすがに3年前の内容だし、ということであたしにヘルプ要請を出した。 これがことの経緯。 もちろんあたしは予定とかなかったし、何より嵐山さんの家!部屋!という気持ちが勝りすぐにOKを出した。 幸いあたしは勉強は得意な方だ。 急遽欠席することになった子の代わりを務められるかどうか自身は薄かったが、それでも行くしかない、こんなチャンス! そして今に至る。 「すみません、先輩。私も一つわからないところが。」 「あ、うん。これはね…。」 初めはとても緊張した。 だってもう慣れてしまってすっかり忘れてたけど、ボーダーの嵐山隊と言えば…(以下略) 当然他のメンバーも有名人だ。 佐鳥くん、時枝くん、木虎さん、そして今日いない綾辻さん。 思わずサインをもらいそうになるが、こういうのは失礼かと思ってやめた。 「3人とも完璧だよ。あとは問題集をやっとけばきっといい点取れるよ!」 お昼過ぎから始めた勉強は気がつけばもう夕暮れ時で、教え子3人はもともと勉強ができるタイプだったようで、正直この勉強会自体いるのかなと疑問に思う。 ただやはり広報部隊と言われるだけあってイメージを崩さないように成績も上位を取るように心がけてるらしい。 あたしより年下なのにしっかりしてるなぁ。 「3人とも頑張ったな!あ、そうだ。俺お菓子買って来てたんだ。ちょっと取ってくるから休憩しててくれ。」 嵐山さんはそう言って部屋から出て行った。 あ、少し気まずいかも、この状況。 この数時間勉強を教えていたけど、まだ普通に会話できるほど仲良くなれていない。 「アリス先輩、今日ありがとうございました!超わかりやすかったです!」 少し困っているとそれに気がついたのか、佐鳥くんが話しかけて来てくれて、 それに乗っかるように時枝くんや木虎さんも話に入ってきた。 「僕は英語苦手な方だったんですけど、桐島先輩に今日教えてもらったおかげで何かコツをつかめた気がします。」 「桐島先輩の学校も進学校ですもんね。」 「あ、いや。あたしなんかで助けになったなら良かった、です。」 こんなに人から感謝されたことってあまりないからすごく照れる。 なんて気の遣い方を知った子達なんだ。見習わなくては! 「ところで。」 と思った矢先だった。 「アリス先輩と嵐山さんて付き合ってるんですか?」 「えっ?!?!」 佐鳥くんがワクワクした表情で聞いてきた。 と、突然何を言ってるんだ、この子は! 「佐鳥、聞き方ストレート。」 「失礼ですよ。」 「えー、だって気になるじゃん!2人も気になってるくせにー!」 そう言ってじっと3人が見てくる。 「つ、付き合ってない!そんなことないない!」 あたしは思いきりぶんぶんと手を振った。 付き合うだなんて、そんな恐れ多い。 確かにいい雰囲気だと思うし、デートとかも一応行ったけど。 でも付き合ってはいない。 嵐山さんの中ではとても仲の良い友達ぐらいにしか思っていないかもしれない。 それにここまでいい雰囲気で何もないということは、その可能性の方が高いんだ。 そう考えると自分で言ってて虚しくなって来た。 「でも好きなんですよね?」 「そ、それは、うん、まあ。」 「告白しないんですか?」 「ぅえ?!」 佐鳥くんの容赦のない言葉に、前半は素直に頷いたが、後半の質問は驚いて思わず変な声を出してしまった。 恥ずかしい、こんなにきちんと口にしたことはない。 しかもこの子達今日初対面なのに! 「おーい、お菓子とジュース持って来たぞ。?どした?」 そこへ嵐山さんが帰ってきた。 場の微妙な空気を感じたのか、心配そうに首を傾げる。 ふわぁぁあ!タイミング良すぎるよ! い、今の聞かれてなかったよね? 「あ、嵐山さん。折角なんですが僕達家に帰って復習しようと思って。」 と、先ほどそんな話全く出ていなかったのに時枝くん。 「そういえば桐島先輩も嵐山さんに勉強教えていただきたいところがあるそうです。」 と、言った覚えのないことを言う木虎さん。 待って待って!あたしそんなこと言ってない! 「そう言うわけで、あとは頼みます!嵐山さん!」 あたしが口を挟む間も無く、あれよあれよと言う間に話が進む。 こ、これが噂に名高い嵐山隊、阿吽の呼吸! いや、そうじゃなくて! 「お前達勉強熱心だな!そう言うことなら仕方ないな。ほら、このお菓子とジュースはとりあえず持って帰れ。」 そう言って嵐山さんはお菓子とジュースを配布する。 嬉しそうに笑うと佐鳥君達はテキパキと部屋を出て行った。 扉を閉める瞬間、佐鳥くんが親指を立ててぐっ!とする。 ぐっ!じゃないよ!それってこのあとどうしろって言うのよ! 「アリスちゃん、わからないところって?」 「ぁ、ぅ。…あのここの方程式なんですが…。」 本当にわからない、苦手な箇所があったので、流れに身を任せて勉強を教えてもらう。 距離が近い。 2人きりになったせいか、息遣いまでよく聞こえる。 ああ、勉強の内容とかあんま入ってこない。 「できるじゃないか、アリスちゃん。次のテストも完璧だな。」 「は、はい!」 ひー、何その笑顔! もうダメ!こんな空間緊張してもう何か勉強どころじゃない!帰ろう! 「あ、あたしそろそろ帰りますね!」 「そーお?ゆっくりしてけばいいのに。」 だからそんな顔は反則! 嵐山さんちょっと帰ってほしくなさそう! それは嬉しいけど身が持たないのは事実。 「送って行くよ。」 「あ、いえ。大丈夫ですよ!そんな!」 「俺が送っていきたいんだ。ちょっと回り道してついでに散歩しないか?」 そんな風に言われたら断れない、断れるわけがない。 あたしは小さく頷いた。 (ホントに嵐山さん、あたしのことどう思ってるんだろう。) 佐鳥くんの言葉がふっと蘇る。 『告白しないんですか?』 してみたら嵐山さんは何というだろうか。 まず初めに驚いて、それから次は? イエス?それともノー? イエスだったらすごく嬉しい。 でもノーだったら? 「お散歩いいですね?コタローくんも連れていきますか?」 そう考えるとやっぱり怖くて、あたしはいつも通りの態度で嵐山さんとの散歩に出るのだった。 Prev | Next ******************************* 2015.5.2 嵐山隊との絡み回。 何を隠そう書きたかっただけ! diaryにてちょっとネタ ※お返事不要の方はお申し出お願いします。 back WT | back main | back top |