ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


「今日が最後だ。」





負けられない闘い ver.荒船隊 in another story





荒船隊で行われた1日1回、合計31本勝負。
アリスのひょんな一言から始まったこの1ヶ月の荒船隊訓練試合。
アリスは1勝でもすれば荒船と穂刈をぎゃふんと言わせられる、ということで奮闘すること31日目。
結果15-15-0でアリスは今まさに崖っぷち状態だった。

「さーて。決着つけるか。」

荒船がガチャリと愛銃を鳴らす。

「望むところだ、いいぞ。」

それに応えるように穂刈も銃を鳴らす。

「か、勝つのは私ですから!!」

最後に若干震え声のアリス。

そう、そして今日は最後の訓練日。
ここでアリスが勝てばアリスの勝ち。
荒船か穂刈、どちらかが勝てば勝った方の勝利である。

「やっと最後か。」

そしてそれを見守る同じ隊の半崎。

「おーい、半崎ー!」

欠伸をしながら3人の行く末を見ていた半崎に話しかけて来たのは、嵐山隊の狙撃手、佐鳥だった。

何だかデジャヴだ、この感じ。

「今日、アリス勝てるかな?」

「どうだろうなー。」

佐鳥は荒船隊の最後の試合と聞いて慌ててやってきたのだ。
対戦成績はもちろん把握しており、今日アリスが勝てばそれで彼女の勝利が決まるのも知っている。

「俺、超応援する!」

「そ。」

荒船がパネルを操作する音が辺りに響く。
周りはみんな荒船隊の訓練試合の行く末を見守ろうと静かにその光景を見ていた。

「今日はラストゲームだし、ハンデやるぞ、アリス。」

「ハンデ?」

「狙えるぞ。一発逆転。」

「一発逆転!」

荒船と穂刈はアリスに言った。
ハンデと一発逆転という甘い言葉にアリスは思わず飛び上がる。

2人が言うにはこの試合どこかのタイミングでポイントが普段の倍以上に設定された、狙撃難易度の高い敵が出てくる設定らしい。
そいつさえ撃てれば荒船と穂刈がどれだけ点を取っていても勝てる得点だという。
しかし、逆を言えば荒船と穂刈のどちらかに撃たれれば終わりだ。

「の、望むところです!」

そんなことを言ってられる場合ではない。
アリスは愛銃を握りしめ大きく頷いた。

そうして試合の開始を告げるアナウンスが響く。





今日のこの試合、アリスが負ければどうなるか、半崎にはわかっていた。
荒船が勝てば荒船とデート。
穂刈が勝てば穂刈とデート。
まあそれは別にいいだろう。
先輩諸氏も気合が入っているみたいだし、強い人が勝つ、ただそれだけだ。

(…。)

ここ1ヶ月のアリスの様子を思い返す。



『勝つ自信あるのかって?もちろん、当たり前じゃない、義人!』

『何で勝てないの!もおー!』

『どうしよう、義人!先輩達強すぎ!!』

『ふわぁぁ、明日で最後だよー!!!』



次第に慌てふためくアリス。
それに反比例して機嫌が良い荒船と穂刈。
アリスは正直自業自得だ。

でも…。

(しょうがないよな、ホントに。)

半崎は静かに立ち上がった。





(まずい、点差が広がりすぎちゃったよ!)

訓練試合も終盤に差し掛かる中、アリスは荒船や穂刈に差をつけられて焦っていた。
これから出る敵を全てアリスが撃てたとしてももう逆転は難しい。
となると、2人がくれた一発逆転のチャンスにかけるしかない。

(いつ、どこで出てくるの?!)

アリスはフィールドに全神経を注いだ。
だが荒船と穂刈がそう簡単にその敵を撃たせてくれるはずもなく、後半は3人の撃ち合いになっていた。
撃っては移動し、撃っては移動しを繰り返す。

そうして最後の一瞬が訪れる。

「あ、あれもしかして!!」

一つだけ今までと装飾の違う敵がふっと現れた。
アリスは直感的にそれが高得点の敵だと認識し、すぐさま照準を合わせる。
と、その時足場が崩れて狙いが外れてしまった。
穂刈に場所がばれたのだ。

「させないぞ、絶対に。」

「穂刈先輩っ!!」

アリスがバランスを崩して空を仰ぐ。
するとその視界に銃を構えた荒船の姿があった。
銃口は先ほどの敵の方を向いている。

「あ、荒船先輩、待って!」

「悪いな、アリス。勝たせてもらうぞ。」

そう言って荒船が引き金を引こうとした瞬間だった。
突然はるか後方から放たれた光が一発逆転の的を撃ち落とした。

「「「なっ?!」」」

3人はお互い顔を見合わせる。
荒船も、穂刈も、アリスも、誰も撃っていない。

なら、撃ったのは誰?

『半崎 WIN』

試合終了の合図とともにディスプレイされたのは、荒船隊残りの1人。

「はい、俺の勝ちー。」

そう、敵を撃ったのは半崎だった。

「な、義人!何で?!」

「これで15-15-0-1で試合終了。罰ゲームはみんななし。めでたしめでたし。」

3人に近づく半崎はパチパチと1人でやる気なさそうな拍手をする。

「3人とも集中するのはいいんですけど、俺が入ってきたことぐらい気がついてくださいよ。」

「おい、半崎。何の真似だ。」

軽い感じで流そうと思い、ダメ出しをする半崎だったが、
ムッとしてあからさまに怒った様子の荒船と穂刈に気がつくと頭を下げた。

「先輩、アリスも反省してるんで許してやってもらえません?罰ゲームなしにしましょうよ。」

確かにこの状況は、勝利条件のどれにも当てはまらない。
荒船と穂刈は同点でどちらが勝ったとも言えないし、アリスは0勝なので当然荒船と穂刈が東の前で悔しがる必要もない。

「ふわぁぁ、義人!ありがとー!って痛い痛い!」

アリスが喜びのあまり体当たりするかのように半崎に飛びつく。
だが飛びついたのを半崎は防御しただけでなく、グリグリとアリスの頭を痛めつけた。

「アリスがもともと先輩らに失礼なこと言うからいけないんだぞ、反省しろ。反省を。」



『先輩達なんてあと1ヶ月もあれば楽勝です!』



売り言葉に買い言葉のような、そんな流れだったが始まりはアリスの一言だ。
アリスはしゅんとして、頭を下げた。

「はい、反省します。」

「ホントだよ。」

しゅんとしているアリスを置いて、半崎は荒船と穂刈に駆け寄る。

「先輩ら、すみません。試合の邪魔して。」

もう一度頭を下げる半崎に、2人は顔を見合わせる。

「いいさ、俺達も大人気なかったしな。」

「そうだな、確かに。」

優しく許してくれる荒船と穂刈。
これで荒船隊にいつもの日常が戻りそうだ。

「あ、でも今回の勝負は俺が勝ちっすかね。」

と、思いきや。

「「は?」」

半崎の意味深な言葉。
その言葉を荒船と穂刈が聞く前に、半崎は踵を返してアリスの元へと戻る。

「義人!ホントにありがとー!あたし、反省する、すごく!」

「ホントだよ。とりあえずオムライスとハーゲンダッツおごって。お腹空いた。」

「仰せのままに!」

半崎はそう言ってアリスの手を引いて訓練場を後にする。
その鮮やかすぎる手際に、荒船と穂刈は言葉もなくただ見送ることしかできなかった。
出て行く瞬間半崎はこちらを見て何やら口を動かす。



『とりあえずデートの一番乗りはもらいますね。』



荒船と穂刈はやってくれると笑う。
荒船隊の負けられない闘いは、終わるどころか今やっと始まったのだ。










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2015.4.20
負けられない闘い、まさかの続き。
ここまできたら書くしかないっていう意気込みの半崎夢です。
2015.4.28
半崎が佐鳥の先輩設定になっていたので、同い年設定に直しました。すみません。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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