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「これ、ホントに着方合ってるのかな?」





after the 負けられない闘い ver.荒船隊 side A.H





「あ、先輩!やっと見つけた!」

ごった返す人混みをかき分けて、アリスは履きなれない下駄をならしながら穂刈に駆け寄った。
濃い青色に薄いピンクや水色で描かれた朝顔。
定番な柄の浴衣に綺麗に身を包んだアリスはやっとのことで穂刈の元にたどり着いた。

先月荒船隊で行われた1日1回、合計31本勝負。
アリスのひょんな一言から始まったこの1ヶ月の荒船隊訓練試合。
アリスは1勝でもすれば荒船と穂刈をぎゃふんと言わせられたはずなのに、
結果16-15-0で穂刈が勝利した。
アリスはというと勝った人の言うことを何でも聞くという約束だったので、今こうして穂刈と地元の祭りにきているのだった。

今日は三門市のとある地域で行なわれる桜夜祭りの日。
大々的ではないが、訪れる人も多く賑わいを見せていた。

「おい、あの子超かわいくないか?」

「いや、でも彼氏付きだろ?諦めろ。」

周りの人間がそんなことを言いながら穂刈とアリスの脇を通り過ぎて行く。

(彼氏。いい響き。)

そんなことを穂刈は考えているが、目の前のアリスには周りの声など聞こえていなさそうな様子。
見たところ、浴衣を気にしている様子だった。

「どうした?」

「いや、浴衣とか初めて着たのでちょっと…。」

見れば少し顔が赤い。
穂刈はまさかと思ったがさすがにそんなこと聞けるはずもなく、押し黙る。

(遥先輩に浴衣借りたのはいいけど、ホントに合ってるのこれ?!)

浴衣は下着をつけると綺麗に着られないからつけないんだよ。
と言うのが綾辻曰くだが、本当にそうだろうか。



ピロリン



すると突然穂刈のスマフォが音を立てた。
何やらメッセージを受信したようで早速あけてみると半崎からだった。

『穂刈先輩、綾辻先輩から伝言です。
"やってやりました。頑張ってください。"だそうです。じゃ。』

穂刈はメッセージを見てやっぱり、と目の前のアリスに視線を落とす。
かなり自分の様相を気にしているようだ。
綾辻の言うことは半分本当だが、半分は嘘だ。
洋物の下着をつけるのではなく、和物の下着をつける。これが正しいところだが、多分アリスはそう教えられなかったのだろう。
いや、というか今のメッセージはなんだ、どうしろと言うんだと穂刈は悩む。

「行くぞ、アリス。」

「!は、はい!」

穂刈は考えた末、このままでは気になって仕方ないので、このことは忘れて祭りを楽しむと言う選択肢を選んだ。
そうして2人は屋台の並ぶ本通りへ向かった。





「おいひいでふね、ふぇんぱい。」

「わかんないぞ、何言ってるか。」

口にたこ焼きを頬張りながらアリスはにっこりと穂刈を見上げた。
さっきはイカ焼き、その前はカキ氷に綿あめ。
見事に色気より食気で、穂刈は思わず笑った。

「どうしました?」

「いや、かわいいな、お前は。」

そう言って穂刈はアリスの頭を撫でた。

「何食べる?次。」

アリスは突然頭を撫でられたのと、穂刈があまりに優しく笑うので、恥ずかしくなりうつむいた。

「チビカステラ。」

声が小さくなってしまったのは、さっきから食べてばかりなのが恥ずかしくなったからなのか、それとも別の理由なのか。
どちらが理由かはわからないが、何にせよ顔は赤い。

「いいぞ、買ってやる。」

穂刈はまた笑ってアリスの頭を撫でた。





祭りの最後を告げる花火が上がる。
穂刈とアリスは人気の少ない、所謂花火を見るのには穴場と呼ばれる場所で贅沢にベンチを陣取り夜空を見上げた。
祭りももうすぐ終わりだ。
そう思うと何だか物寂しい。

「花火綺麗ですねぇ!」

2個目の綿飴に上機嫌なアリスは空を見上げてそう言った。
穂刈も花火を見上げて大きく頷く。

「いいな、やっぱり。祭り。」

「そういえば先輩お祭り好きでしたもんね。」

普段見られない穂刈の満面の笑みを見てアリスは不意に彼の好きなものを思い出す。
見た目は表情少ないのでそんな風には見えないが、お祭り好きという穂刈。

「ああ。行くぞ、夏になったら地元の祭り。やるのも、見るのも、好きだな。友達とよく行く。」

今から想像するだけで楽しみだというように、穂刈は笑った。

「友達とですか。」

その顔を見てアリスはポロリとこんな事を零す。

「…その友達の中には女の人もいるんですか?」

本当にポロリと自然に。
そんな言葉を言ってしまったアリスは気がついて顔を真っ赤にした。

だがもう遅い。

「どういう意味だ?今の。」

穂刈は逃げようとするアリスに詰め寄る。
どういう意味も何もそういう意味にしか聞こえない。

「い、意味とか別に…。」

「教えてやろうか?」

穂刈がそう言ってアリスに囁いた時、タイミングよくスマフォがなる。
アリスは反射的立ち上がった。

「お、お母さんからだ!帰らなきゃ!!先輩、また!」

そう言って決して早くない速度で走り出す。
追いかければ穂刈は捕まえられただろうが、今日は見逃してやろうと穂刈は最後の花火を見上げた。



『やいたんだろ?やきもち。』



穂刈に言われた言葉に首を振る。
母親から電話だなんて嘘に決まっている。
たまたまセットし間違えたアラームが鳴っただけだ。

「別に、やきもちなんてやいてないし。」

人混みに紛れたアリスの言葉はそのまま春の夜空に消えた。










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2015.4.16
負けられない闘いの続きです。
穂刈さん勝ったバージョンですね。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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