「おーっす。ただい「うわああ、洸太郎先輩、おかえりなさいいぃぃ!!!」 「うおお!?どしたどした?!」 帰ってくるよ 「やっと寝やがったか。」 俺は泣き疲れて眠ってしまった、一つ年下の彼女、アリスにため息をついた。 (今日は一段と挙動がおかしかったな。) 俺とアリスは同棲を始めて1年くらい経つ。 ま、同棲っつってもお互い大学生だし、俺に関して言えばちゃんと一人暮らし用の家があるんだけどな。 でも何だかんだ、アリスの家に帰って来てしまう。 今日みたいに急にゲートが開いて緊急招集かかったりして疲れた時なんかは特に。 俺は腕の中で眠るアリスを見た。 帰って来るや否やこいつは俺に全力でタックルして来てしがみついて泣きじゃくった。 その時に打った後頭部がまだ痛い。多分コブできてるな、これ。 近所迷惑だと何とか泣き止ませようとしたが、あれもこれも効力はなく、アリスは結局理由も言わずに俺にしがみついたまま泣き続けた。 玄関でしがみつかれたままで居るのもなんなので抱き上げてベッドへ向かう。 普段ならここで暴れて抵抗するが、今日はそれもなく泣き続ける。 よっぽど何かあったのかと心配になる。 ベッドへおろして向かい合って寝転がり、どうかしたのかと問うてもアリスはただ頭を左右に振る。 ただ俺に縋るように抱きついて来て泣き続けた。 普段自分からこんなにくっついて来たりしないから俺的にはちょっとドキドキしてたりするんだが、まあ、それどころじゃない。 俺は途中から聞くことをやめ、ただアリスを抱き寄せ子供をあやすように背中をポンポンと叩いてやった。 で、今しがたやっと眠ったところだ。 「どうしたんだよ、アリス。」 俺はベッドから抜け出し、タバコを一本吸おうとベランダに出た。 春だと言うのにまだ夜は少し寒い。 俺はポケットからスマフォを取り出す。 「あ。」 すると数件着信履歴が残っていた。 大学でよく行動を共にする友達からだ。 何だよ、今日は約束別にすっぽかしてねえぞ。何だよ、この着歴の数。 何かしでかしたかと今日1日を振り返りながらコールバックすると、そいつは3コールもしない内に電話に出た。 『諏訪か!』 「うぉ、何だよ、うるせぇな。悪りぃ、折り返し遅くなって。何か『おい、お前無事なのか?!身体は?!身体は何ともねぇの?!』 かなり焦った声で俺の安否を確認してくる友達を俺は不思議に感じた。 「はあ?俺は何ともねえぞ。どしたんだよ?」 いつも通り間の抜けた声で返事してやると、そいつも安心したのか冷静さを取り戻したようだった。 『そう、なのか?あ、いや、何ともねえならいいんだ。実はさ…。』 俺は友達の電話を切ると、ベッドに戻りアリスの横に再び寝転がった。 「ごめんな、アリス。」 今日の一連のこいつの不可解な行動。 俺は友達の話を聞いて納得がいった。 今日の緊急出動で、ゲートが開いた時、たまたま近くにいた俺と堤は現場に急行した。 市街地と警戒区域の境目ぐらいにゲートが開いちまって、避難も遅れて少しだけ市街地に被害が出た。 今日はトリオン兵の数も少し多く、何とか2人で粘っていたが、最後増援が駆けつける直前、俺はモールモッドに身体を上下に真っ二つにされてベイルアウトした。 で、何とそれがちょうどテレビに映っちまってたらしい。 俺達ボーダー隊員同士なら、ああやっちまったな、ダサいところ映っちまったぜ、あはは。で済むところだが、一般人にはそうもいかない。 いや、生身で戦っていないことは一般人にも公開されていることだが、やはり実感がないんだろう。 思えば俺もB級あがりたての頃、仲間の頭が吹っ飛ばされるところを見て肝が冷える思いをした。 いつの間にか戦い慣れしてしまって忘れていた感覚。 でもアリスやさっきの友達は違う。 真っ二つにされた俺を見てどう思った?どう感じた? 答えは見ての通りだ。 「アリス、ごめんな。」 俺はもう一度そう呟いて、眠るアリスにキスをした。 唇に、頬に、おでこに、閉じた瞼に。 「俺は無事だぞ。」 そして最後にもう一度唇に。 「絶対にお前のところに帰ってくるよ。」 そして俺もアリスを抱き寄せ眠りについた。 ******************************* 2015.4.24 ちょっとお久しぶりな諏訪さんです。 やっぱりかっこいいな、この人。 ※お返事不要の方はお申し出お願いします。 back WT | back main | back top |