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「決めた、あたし諏訪さんに告白する!」





今がチャンスだ





とあるファミレスの隅の席で、あたしは勢い良くコーラを飲み干してそう言った。

「「おー。」」

それに相槌を打つのはあたしと同じボーダー所属の迅と嵐山。
あたしの一大決心に、パチパチと拍手をしてくれた。

ご紹介が遅れました、あたしは桐島 アリス。
ボーダーB級諏訪隊所属の19歳、女子大生。
ずっと好きだった隊長の諏訪さんに悩みに悩んで告白をする決心を今したところだ。

「遂に腹くくったか。」

「頑張れ、アリスならいけるぞ!」

迅と嵐山にはずっと諏訪さんのことを相談していた。
あたし達3人は同い年ということもあり、何かと休日でもこうやって一緒にいることが多い。
嵐山とは大学も一緒だし、話をする機会が尚更多かったりする。

迅と嵐山はポテトをもしゃもしゃ頬張って、まるでハムスターみたいな状態だ。
ホントに真面目に聞いていたかんだかわからないが、多分2人はこれが普通なんだと思う。

「迅、何か見えてても言わないでよ!絶対よ!」

「そこまで野暮じゃないって!」

あたしの釘差しに迅は苦笑した。
本当は何か見えているなら教えて欲しい気持ちになってしまうが、これは自分でちゃんと立ち向かわなきゃいけない話だ。

「アリス、頑張れよ!俺達ホントに応援してるから!」

「ありがとう、嵐山!」

「もしダメだったら泣きにきていいからなー!」

「ちょっと!そう言うこと言わないでよ!でもありがとう!」

あたしはパチリと自分の両頬を挟むように叩くと、鞄を持って立ち上がった。

「あたし、基地にちょっと用事あるから今日はここで!」

「おう!」

「またなー。」

あたしはお金をテーブルに置くと足早に店を出た。
今日の諏訪隊は任務もなく、訓練もなく、ボーダー正隊員には珍しい非番の日。
でもあたしはと言うと、もうすぐB級のランク戦始まるので、作戦室で他の隊の資料を見る予定にしていたのだ。





「あれ、諏訪さん。」

「お、桐島じゃねーか。」

作戦室に行くと何と諏訪さんが一人でいた。
非番の日だから今日はてっきりいないものかと思っていただけに、心の準備ができてなかったので姿を見つけると心臓が跳ね上がる。

「どした?忘れ物でもしてたのか?」

「あ、いえ。もうすぐランク戦始まるし、他の隊の情報をまとめておこうかと思って。」

「おー、お前はホントにマジメだな。俺もちょうど他の隊の資料見てんだ。こっち来いよ。」

そう言って諏訪さんは自分の隣の席の椅子をガラッとひいた。
と、隣に座って良いんですか!?
や、やばい、さっき一大決心したばかりだから緊張する。
あたしは鞄を机に置き、諏訪さんの隣に座った。

「今はな、ちょうど荒船んとこの見てたんだ。」

そう言って自分が見ていたパソコンの画面を少し私の方に傾けてくれた。
諏訪さんは優しい。
見た目がただのヤンキー大学生なので勘違いしている人も多いが、実は推理小説が好きだったりとか意外と文学的な趣味もあったり、さっきの椅子をひいたり、画面傾けたりとか、そう言う些細な気遣いができる優しい人なのだ。

「となると荒船くんがこう来た時は…。」

「そうだな、日佐人使ってこう…。」

何だかんだ集中しているといつの間にか時間もあっという間に経ち、日もすっかり沈んだ時間になってしまった。

「もうこんな時間か。桐島、お前まだやるのか?」

「あ、はい。あと来馬先輩のところだけ見ようと思います。」

そう言って諏訪さんの方を見ると、私の方を覗き込んでいたようで思いの外顔が近くあった。

「!!」

あたしは顔をばっと背け、画面に向き直る。
顔が熱い。あんなに近くにいるなんて反則だ。

「…じゃあ俺もそれ付き合うわ。来馬んとこは村上が厄介だし、一緒に作戦考えようぜ。」

諏訪さんは自分の椅子の前に座り込んで、画面に向き直った。

…あれ。作業に集中してて気がつかなかったけど、今ってもしかしてものすごいチャンス、よね?
2人きりだし、雰囲気もそんなに悪くないよね?

あたしはゴクリと喉を鳴らした。
さっき一大決心をしたばかりだが、自分の中の温度がまだ高い内にやっておくべきだ。

「あ、あの、諏訪さん!」

あたしは勇気を出して諏訪さんを呼ぶ。
緊張して声が少し裏返ってしまった。

「どした?」

諏訪さんは不思議そうな顔をしてこちらを見る。
ダ、ダメだ。かっこいい!顔を直視できない!

「あ、あのあたし…。」

行け、アリス!今いかないでいついくのよ!!

「あたし、諏訪さんのことが「待て。」

意を決してその言葉を言おうとした時だった。
諏訪さんが私の口に人差し指を立てて、言葉を制した。
好きです、と言えなかった私は何故止められたのかわからず諏訪さんを見た。

「お前からそれを言ってほしくない。」

諏訪さんは静かにそう言った。
言ってほしくない?まだ何も言ってないのに?
いや、さすがに今のシチュエーションならあたしが何を言おうとしたかはわかるはず。

つまりあたし…。

「どうして…。」

何も言うこともできずフられちゃったってこと?

あたしは目の前がじわりと歪むのを感じた。
あ、やばい、泣く。そう思った瞬間だった。

「俺から言わせろ。」

諏訪さんはそう言うと私の上に影を作って、唇に何かを押し当てて来た。
何をされたかわからず固まったままのあたし。
我に返ったのは、唇からそれがちゅっと音を立てて離れた時だった。

「好きだぜ、アリス。」

「!!!」

顔を真っ赤にしてガタリと音を立てて椅子から立ち上がろうとしたけど、手首を掴まれ逃げることができなかった。

「待て待て待て待て。何で逃げんだよ。」

「だ、だって諏訪さん、い、今、今の!」

「返事聞くまで離さねーぞ。」

諏訪さんはあたしを真っ直ぐに見つめて来た。

「さっき俺に言おうとしたこと言ってくれよ、な?」

そう言って意地悪く笑う諏訪さんにはもう逆らえない。

「諏訪さん、狡いです。」

「狡くねぇ。お前が先に言おうとするからだぞ、アリス。」

「急に名前で呼ぶし。」

「何だよ、桐島に戻すか?」

「え、ヤダ!」

諏訪さんは空いているもう片方の手であたしの頬に触れた。
早く早くと視線で追い立てられて遂にあたしは観念する。

「諏訪さん、好きです。」

「俺も好きだぜ、アリス。」

諏訪さんはそう言ってもう一度あたしにキスをした。










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2015.4.12
諏訪さんに少し意地悪をさせたかった。
これも出来心です。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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