ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


それは桜舞い散る陽の下のこと





幸せな昼下がり





「晴れてよかったですね。」

「ああ、そうだな。」

春の麗らかな陽気の中、辺りは満開の桜を見ようと集まった人々で賑わっていた。
昼間から酒を煽る社会人。
お菓子をつまみながら話に花を咲かせる女子大生。
親子で仲良く行楽弁当を食す家族。
いろいろなグループがその花見会場にはいた。

「アリス、腹減ったー。」

「花より団子ですね、洸太郎先輩。」

うるさく泣く腹の虫を抑えながら諏訪が言うと、隣でアリスは笑った。

ボーダーB級隊員諏訪 洸太郎、大学3年生。
そしてボーダーではない桐島 アリス、大学2年生。
付き合い出して1年近くになる2人は今日は誰にも邪魔されずに桜を堪能していた。

「今日のお弁当は気合い入れましたよ!」

そう言ってカパリと得意げに重箱のふたを開けるアリス。
諏訪はそのお重の中身を見ておー、と声を漏らした。
中は豪華絢爛、まさに花見にふさわしい行楽料理が詰まっていた。
見ているだけでヨダレが出そうになる。

「たくさん作りましたからたっくさん!食べてくださいね。」

そう言って柔らかくアリスが微笑めば諏訪はぶんぶんと首を縦に振った。

「いただきまーす!」

諏訪は嬉しそうに弁当の中身を次から次へと頬張った。
もぐもぐと美味しそうに食べる諏訪を見てアリスは尋ねる。

「美味しいですか?」

「ああ、めちゃうま。」

「木崎先輩のよりもですか?」

「レイジのよりも。」

その言葉を聞いてアリスは諏訪に隠れて小さくガッツポーズをする。
諏訪はどうも木崎の料理に慣れすぎて舌が肥えている。
今日はアリスは戦にでも行くぐらいの気概でこの弁当を作ってきたのだ。
木崎のよりも美味しいと言ってもらえないとこっちが困る。

(ガッツポーズ見えてんだよなあ。)

隠れてるつもりで隠れてないアリスのガッツポーズに諏訪は笑った。





『あ、あの諏訪先輩!』

諏訪がアリスに声をかけられたのはちょうど1年ぐらい前。
残念ながら去年は暖かかったために桜は早咲き。
2人が出会った頃には散ってしまいほとんど残っていなかった。

『何だ?』

諏訪はちょうど学内の中で閑静な場所にあるベンチに座って本を読んでいた。

突然やってきたアリスは顔を赤くして、それでもこう言った。

『あ、あの、わ、私諏訪先輩のことが好きなんです!…も、もし彼女さんとかいないなら、その、お、お付き合いしていただけないでしょうか!』

緊張で震えた声でそう言っていたのを覚えている。
諏訪はその時アリスのことを知らなかった。
だが自分のことを知らない相手に対して堂々と告白をしてくるアリスの度胸に興味を持った。
諏訪は立ち上がってアリスの前まで行きこう言った。

『彼女いねえし、別にいいぜ?』

諏訪はそう言ってアリスの前髪についた桜の花びらを取ってやった。

『ほ、ホントですか?!』

『嘘でそんなこと言うほど落ちちゃいねえよ。』

そう言ってその花びらをアリスの鼻の上にちょこんと乗せた。

『お前、名前は?』

『あ、失礼しました。わ、私、桐島 アリスと言います。』

『アリス、か。よろしくな?』

『っ。よ、よろしくお願いいたします。』





「ん…あ?」

気がつけば諏訪はアリスの膝を枕にして横たわっていた。
いや、正確に言えば自分で横たわった記憶はある。
だがそこからどうやら諏訪は眠ってしまっていたらしい。

「あら?起きました?洸太郎先輩。」

周りはまだまだ騒がしいが、なんだか気持ち人気が少なくなっているのを諏訪は感じた。
諏訪はやっちまったと目元を両手で覆い隠す。

「あー、わり。俺どれくらい寝てた?」

「んー、40分ぐらいでしょうか?」

諏訪に膝を貸すアリスは腕時計を見てそう言う。
40分もアリスの膝枕で寝てただなんて。
改めて謝ろうと諏訪が起きようとしたその時、アリスが諏訪の肩を引っ張ってそのまままた自分の膝へと諏訪の後頭部を誘った。

「もうちょっと寝ててもいいですよ、先輩。」

「何で?」

「先輩の本もうすぐ読み終わりそうなので。」

そう言ってアリスは文庫本の表紙を諏訪に見せる。
それは諏訪が楽しみにしていた作家の新刊で、先日本屋で購入したばかりのものだった。

「はっ?!お前もう読んじまったのか?!」

「ネタバレしちゃおうかな〜?」

「マジでそれだけは…。」

諏訪は再び顔を両の手で覆う。

「冗談ですよ。」

そう言ってアリスは本を脇に置くと諏訪の髪の毛から何かをつまみ上げた。
それは小さな桜の花びらだった。

「先輩の髪の毛、桜の花びらだらけで綺麗だったのでもうすこし見たくて。」

そしてアリスはいつか諏訪が自分にしたのと同じように諏訪の鼻先に花びらを置いた。
アリスが自分と同じことをしたのがなんだか照れくさく、諏訪はわざとちいさくくしゃみをした。
すると諏訪の花に乗っていた小さな花びらは風に乗って空へと舞い上がる。
諏訪とアリスはそれに誘われるように桜の木を見上げた。

「来年も私と桜見てくれますか?」

「当たり前だっつの。」

それはこれからも一緒にいようといるという、たしかな約束だった。









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2019.03.26
70,000打企画、ゆかり様からのリクエストです。
『諏訪さんと年下夢主が春にデートをするお話』でした。
リクエストありがとうございました!


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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