ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


結局なんだってんだよ





マジか、恥ずい





(どいつもこいつも何なんだよ。)

諏訪はリビングのソファに寝転がり天井を見つめていた。
誰にだって隠したいことの1つや2つはあるだろう。
諏訪はそう思って拗ねては見せたが堤や東に無理にそのことを聞かなかった。
無論アリスにもだ。

だがもうこんなモヤモヤした状況我慢できない。
諏訪は何を言われようがアリスが帰ってきたら洗いざらい聞いてやると改めて決心した。

「たっだいまー!」

とちょうどそこへアリスが帰ってきた。
声を聞く限りかなりご機嫌そうだ。
諏訪はそれが気に入らなかった。

「あれ、洸ちゃん?」

いつもならアリスが帰れば必ずおかえりと言ってくれた諏訪の声が聞こえず、アリスは首を傾げながらリビングへと進んだ。

「あ、洸ちゃん!いるじゃん!いないのかと思っちゃった!」

アリスは諏訪の不機嫌そうなオーラが感じ取れないのか構わず、ソファに横たわる諏訪に近づいた。

「それとも起こしちゃった?」

そう言って顔を覗き込んでくるアリスはいつもと寸分違わぬアリスだ。
諏訪はそのアリスの態度がなんだかショックだった。
自分ばかりが気にして、拗ねて、モヤモヤして。
それなのに目の前のアリスは何も変わらない。
太刀川に肩を抱かれていたことも、出水に手を引かれていたことも。
諏訪の気持ちはこんなにもかき乱されるのに、アリスにとってはなんでもないことなのか。

「洸ちゃん、元気ないの?」

なんだか沈んだ様子の諏訪にようやく気がついたアリスは心配そうに諏訪の顔を覗き込んだ。
急に接近するアリスの顔に諏訪はドキッとして体ごとソファの背もたれのほうへと寝返りを打つ。
そうしてアリスから顔を逸らすと何でもねえ、と一言小さく呟いた。

「そっか。」

アリスは一言そう返すだけだった。
それがまた諏訪は気に入らなかった。
こんなに自分は落ち込んでいるというのに”そっか”の一言だけとは少し冷たくないか?
諏訪はもうやけくそと思ってアリスに言った。

「太刀川達と何してたんだよ。」

ぼそりと呟いたつもりだったが部屋が静かすぎて諏訪は自分の声がよく聞こえた。
なんて不機嫌そうな声を出しているのだ、自分は。

「えっ!?」

諏訪の質問を予想していなかったのかアリスは大層驚いた声をあげた。
そうして遠慮なく諏訪に飛びついてきた。

「な、何で知ってるの!?」

「帰りに一緒にいるところ見た。」

「うそ!え、じゃあ、どこまで見てたの?」

アリスは太刀川達といたことを見られていたことが恥ずかしかったのか、後半のほうはやや恥ずかしそうに言った。
それがまた諏訪を傷つけるとも知らずに。

「別にどうだっていいだろ。」

諏訪はぶっきらぼうにそう答えた。

「そっか。見てたんだ、お買い物。内緒にしておきたかったのに。」

そう言ってガサガサと音がした後、諏訪の目の前に小さめの箱が差し出された。

「は?」

見ればその箱は綺麗にラッピングしてあり、箱にバースデーのメッセージカードが添えられていた。
諏訪はそれを手に取るとガバリと体を起こしてアリスを見た。

「本当はもう少し練習してからにしたかったんだけどなあ。買うところ見られてたなら仕方ないね。」

照れたように笑うアリスに諏訪はもうわけがわからない。

「は、え、何だこれ?」

「何ってプレゼントだよ、誕生日プレゼント!」

「誕生日プレゼント?」

諏訪はアリスが何をいっているか全くわからなかった。
というのも今はもう8月も終わりだ。
対して諏訪の誕生日は8月1日でとっくに過ぎている。
諏訪の誕生日会が盛大に行われ、もちろんアリスも一緒に祝ってくれた。
しかもアリスについては家に帰ってからさらに2人でケーキも食べた。

「どうしても洸ちゃんにお誕生日のプレゼントあげたくて。」

諏訪の誕生日会を基地で皆で行った時、プレゼントを各々用意する形ではなく、皆でお金を出しあって1つのものを諏訪にプレゼントした。
おかげで諏訪隊の隊室の麻雀卓は新品だ。
もちろんアリスも出資している。
それにその晩2人で食べたケーキはアリスが買ってくれたものだ。

だがアリスの中ではずっとそれが引っかかっていたらしい。
どうしても個人的に何かをあげたい。
だが何をあげれば諏訪が喜んでくれるかがずっとわからなかったのだ。

「いや、でももらえねえよ。もう祝ってもらってるし。」

「ダメ!私からのプレゼントもちゃんともらって?」

アリスは諏訪の顔を小首を傾げながら見上げる。
そんな風に言われては突き返すことなんて諏訪にはできない。

「わーったよ。ありがとな。開けていいか?」

「うん!」

諏訪がそう言ってようやく笑ってくれたのでアリスはパァっとさらに笑顔を見せた。
そんなアリスが見守る中諏訪が包み紙を開けると…。

「ゲーム機と麻雀のゲームソフト?」

ラッピングの下からは意外なものが出てきた。
それは子供から大人までに愛される家庭用の携帯ゲーム機と、そのゲーム機で遊べる麻雀のソフトだった。
諏訪は普段ゲームをやるわけではないが、麻雀ならできそうだ。

「へえー、麻雀のゲームか。」

「そう!私も同じやつ買ってきたの!」

そしてそう言ってアリスは諏訪のゲーム機と色違いのものと、同じ麻雀のソフトを袋から取り出した。

「同じやつじゃねえか。あ。ってことはもしかして…。」

「そう、これで洸ちゃんと一緒に麻雀で遊べるの!」

アリスはずっと羨ましかった。
諏訪が堤達と楽しそうにあの四角い卓を囲んでいるのが。
小佐野がなまじ混ざるものだから自分も一緒に遊びたいなあと実はずっと指をくわえて見ていたのだ。

「なるほどなー!最近はこういうゲーム機で簡単に大人数で遊べるもんな。でもお前麻雀なんて…。」

諏訪はそこまで言ってハタと気がつく。

「! お前、だから冬島さんとこに!」

「えっ?!何でそれも知ってるの?!」

アリスはまた顔を赤くした。
諏訪の中で全てが繋がった気がした。
あの日諏訪が冬島隊の隊室から出てきたときに見た人は冬島、東、堤。いつも諏訪隊の隊室で麻雀をする面子だ。

「いや、ちょっと前に冬島さんとこの部屋から出てくるの見かけて。」

「見られてたとは。」

アリスはてへへと言いながら頭をかく。
そう、アリスは冬島隊の隊室に麻雀を教わりに行っていたのだ。
諏訪隊の麻雀卓が諏訪の誕生日に新しくなったため、古い卓は冬島隊に引っ越した。
そこで時間が合う時は麻雀を教わりに行っていたのだ。

「え、じゃあ今日太刀川達といたのは?」

「私も堤先輩達もゲーム機とかのことあまりわからないから。そうしたらね、当真くんが柚宇ちゃんのこと紹介してくれて。」

柚宇ちゃんとは太刀川隊のオペレーター国近 柚宇のことだ。
国近の趣味はゲーム。相当詳しいと聞く。

「そうしたら柚宇ちゃんって太刀川先輩の隊のオペレーターで。
あ、それでね、出水くんと唯我くんともお友達になったの!
今日は太刀川先輩と出水くんも買い物に付き合ってくれて、でもちょっと柚宇ちゃんと逸れちゃって。
それで出水くんが探しに行って…。
あ、そうそう太刀川先輩って優しいんだよ!
私が車に轢かれそうになった時に助けてくれたの。
それから出水くんが柚宇ちゃん見つけてきてくれたんだけど、その時にもうこのゲーム機売り切れそうになってるから早くって。
出水くん足が速いから引っ張られて大変だった!」

今日の太刀川隊との買い物が楽しかったようで、アリスは一息にできごとを話した。
だが諏訪のほうはアリスが話せば話すほど血の気が引いた。

それはそうだ。
アリスが自分に内緒で冬島隊の隊室に通っていたのは麻雀を習うため。
東や堤はそれに付き合って内緒で冬島隊の隊室で麻雀をアリスに教えていたのだ。

そして今日の夕方目撃した太刀川や出水とアリスが一緒にいた件。
国近も一緒に買い物に行ったのに、ちょうどはぐれている場面を見てしまった諏訪。
加えて太刀川がアリスの肩を抱いていたのは車に轢かれそうになったアリスを助けるためで、出水がアリスの手を引いて走って行ったのはこのプレゼントでもらったゲーム機の売り切れ寸前という緊急事態に急いだから。

真実がわかり諏訪は頭を抱える。
自分は嫉妬して、拗ねて、不貞腐れてとしていたが、それは全部自分のために周りがしてくれていたことだったのだ。
そう考えると恥ずかしさや申し訳なさが諏訪の胸いっぱいに広がり諏訪は思わず両手で顔を覆う。

「? 洸ちゃん、どうしたの?」

「何でもねえ。」

諏訪はとりあえずまず明日1番に堤に謝ろうと決めた。
アリスと何かあるどころか、堤も諏訪のために一肌脱いでくれていたのに何と大人気ないことをしたのか。

諏訪は顔を覆っている手の指を少し開きその間からアリスを見た。
アリスもちょうど自分を見ていたようでバチリと目が合う。

「アリス、今からちょっと出かけねえ?」

「え、今から?!いいけどどこ行くの?」

「このゲーム機とソフトがもう2個ずつ欲しい。」

それは酷い態度を取ってしまった堤と東へのせめてもの償い。
アリスはまだあまり状況をわかっていなさそうだが、諏訪からの頼みだ。断るはずがない。

「じゃあ行こう!大きなお店にはまだあるって柚宇ちゃんが言ってた!」

アリスはそう言って諏訪に手を差し出した。





数日後、諏訪隊隊室ではゲーム機片手に4人で円を描いているアリス、諏訪、堤、東の姿があった。

「オサノちゃん。これどう思う?待った方がいいかな?」

「いや、アリスちゃん。これはこっちを切って…。」

「お前ら相談すんのずりぃぞ!」

アリスとオサノチーム、未だ負けなしである。








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2019.03.06
諏訪さん連載24話目更新です。
ゲーム囲んで麻雀してる姿想像したら微笑ましいことになる。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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