ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


夏といえば海!





好きでふわふわしてんじゃねえ





「洸ちゃん!早く早く!」

「おー。」

本日は晴天なり。
月日は流れ、季節はすっかり夏。
ギラついた太陽が照りつける中、アリスは海まで駆けていった。
その後ろで荷物を抱えた諏訪が車から降りる。

「アリス、待ってよー!」

「置いてくなー!」

アリスの後ろを駆けていくのは、加古や橘高だ。

8月に入り、大学はもちろん夏休み。
ボーダーでもこの時期はまとまった休みが取れるように、いろいろとシフトを調整する。
今日は3日間連休が取れた大学生組の一部が皆で2泊3日で海に遊びに来ていたのだ。

「アリスのはしゃぎようったらないですね、諏訪さん。」

「ああ、そうだな。付き合ってくれてありがとうな、嵐山。」

諏訪に続いて車から降りてきたのは嵐山だ。
嵐山も今年の夏は完全にオフ。
普段なら根付が夏の特番だとか言って広報の仕事を入れてくるが、
アリスが嵐山を今回の旅行に誘っているのを見て嵐山を休みにしたのだ。
どうも嵐山に断られて残念がるアリスの姿を見たくないらしい。
根付はどうしようもなくアリスをかわいがっているようだった。

「あ、諏訪さん、嵐山くん。こっちですよ。」

「へーい。」

諏訪と嵐山を呼んだのは来馬だった。
今回の宿泊先は来馬家の別荘。
旅行の話を皆でしていたらちょうど来馬が本部に来ており、
ダメ元で、冗談半分で別荘か何か持ってないのかと諏訪が聞いた。
すると答えは何となくそんな気はしていたが、もちろん別荘はあるし、しかも使っていいと快い返事が跳ね返ってきたのだ。

「来馬もなんか悪いな。冗談だったのによ。」

「いいんですよ、諏訪さん。アリスちゃんには太一が期末試験でお世話になりましたから。
ちょうど何かお礼をしなきゃって思っていたんです。」

旅行の話をしていたのは7月の終わりだ。
その頃には高校生ももちろん夏休み。
だが期末試験で赤点を取った者は期末試験ばかりはボーダーの救済も及ばず、夏休みは任務よりも補講が優先されるのだ。
来馬の鈴鳴第一のスナイパー別役 太一は勉強が得意ではない。
このままでは赤点を取ってしまうと頭を抱えていた時に、小荒井からアリスを紹介されたのだ。

アリスが太一を最初に教えた時の印象は、これは酷い、だった。
わりとみっちり教えなければマズイかもしれないと、テスト前は本部の鈴鳴第一の作戦室で別役の家庭教師を務めていたのだ。
ついでに村上や今(こん)も勉強を教わり、来馬隊からは赤点の者が出なかった。
もっとも別役以外はもともと問題はなかったのだが。

そのこともあって来馬はちょうどアリスへのお礼に頭を悩ませていたのだ。

「アリスちゃんがあんなに喜んでくれるなんて思っていませんでしたよ。」

「あいつ中身ガキだからな。」

「怒られますよー、諏訪さん。」

笑いながら諏訪達はとりあえず車の中の荷物をおろした。

「アリス達はもう海へ行ったのか。」

するともう1台の車から風間が降りてきた。
その後から柿崎や迅が降りてくる。

「気が早いなあ、アリスちゃんも。」

「そうだね。」

堤の言葉に来馬が笑った。

「でもまず部屋に荷物をいれなくちゃね。あ、迅くん。悪いけどアリスちゃん達呼んできてくれないかな?」

「へーい、来馬さん。」

迅は来馬に言われて海のほうへ走っていった。
しかし迅のことだ。加古もいることだし一緒に遊びだしかねない。
そう思った柿崎と嵐山は何も言わずに迅を追いかけた。

「悪いなー、俺まで一緒して。」

「いいんですよ、東さん。この機会にゆっくり休んでください。」

今回の旅行の1番の年長者の東は大きくあくびをした。
夏休みに入って授業がないことをいいことに東は任務以外はほとんど研究室にこもりっぱなしだった。
それを心配した人見が、旅行に行くなら東も連れて行けと言い出し一緒に行くことになったのだ。

「アリス達戻ってきたぞ。」

海のほうを指さして最後に降りてきた木崎がそう言った。
そうするとまだ遊びたそうな顔をしたアリス達が嵐山達に連れられて歩いてきていた。
案の定、迅も頭にたんこぶがある。
おそらく一緒になって遊ぼうとして柿崎に怒られたのだ。

「さあ、皆荷物持って。案内するよ。」

『はーい。』

全員が揃ったところで来馬を先頭に別荘へと足を踏み入れた。





「いやー、まさかお手伝いさんがいるとは。」

「いや、でも来馬さんなら納得。」

別荘に入ると数人のメイド服を来た女性達が恭しく来馬に頭をさげた。
普段来馬の家で働いているメイドさん達だそうで、今回の旅行中の世話をするために派遣されたそうだ。

それにしても別荘の中は豪華なものだ。
もちろん外装も豪華なものだが、中とは比べ物にはならない。
だが下品な感じはなく品がいい印象だ。
来馬の優しい物腰によく合っている物件だ。

「冬にも皆で来ますか?露天風呂もあるんですよ。」

なんて来馬はにっこりと笑って言ってのける。

「それで部屋割なんだけど・・・。」

「あ、ちゃんと考えてきたよ。」

そう言ってポケットから紙を取り出したのは堤だった。
来馬にばかり旅行の段取りを任せるのは大変だろうからと、堤は今回の旅行の細かい雑務を引き受けていたのだ。
今回の別荘での部屋割りもその1つだ。
自分だと考えすぎて決まらない可能性もあったので来馬は助かっていた。

「えーと、まず東さんは個室、風間さんとレイジさんが同室、迅と嵐山と柿崎が同室、俺と来馬が同室、それから加古ちゃんと橘高さんが同室で、最後に諏訪さんとアリスちゃんが一緒。」

「はーい。」

「了解!」

「個室とかいいのか?俺。」

「いいんですよ。部屋がいいかんじにあったので。」

「オッケー、じゃあ荷物持ってとりあえず置きにいき「待て待て待て待て!!!!」

全員が部屋割りに文句も言わずに移動しようとする中、諏訪は慌てて呼び止め叫んだ。
それに全員が手を止めて首を傾げる。

「どうした、諏訪。」

「何か忘れ物でもしたんですか?」

「ちっげーよ!!!何で俺とアリスが同じ部屋なんだよ!!」

「え、何か問題が?」

来馬も首を傾げた。

「こういう時は同い年とか女子は女子で一塊だろ!!何で俺らだけハブなんだよ!!」

諏訪の訴えに全員が顔を見合わせる。

『そっちのほうがいいと思って。』

「全員声揃えて言ってんじゃねぇ!!!」

すると諏訪は後ろから誰かに服を引っ張られた。
もちろんアリスだ。
アリスも皆と同じように首を傾げた。

「洸ちゃん、私と一緒のお部屋イヤ?」

少し眉毛をハの字にして言うアリスに諏訪は慌てる。

「あ、いや、そんなわけねえだろ!」

「よかったぁ。」

アリスはぱあっと笑顔になる。
諏訪はその笑顔に何も言えなくなってしまうのだった。





「よーし、海に行くぞー!」

「おー!」

部屋に荷物を置いて水着に着替えた面々はビーチボールやスイカを抱えて海へと向かった。
ビーチはもちろん来馬家のプライベートビーチ。
一般人の立ち入りがないので、混雑などは一切気にしないで遊べる。
パラソルやビーチチェアは既に設置されており、海の家のような建物
(と言っても白壁赤い屋根の超西洋風の小屋)にはメイドさんが常駐。
言えば飲み物や食べ物を用意してくれる。
何から何まで至れりつくせりだ。

「けっ。」

「諏訪さーん、いつまで拗ねてるんですか?」

「うるせえ、堤!大体お前、部屋割り決めるんだったら俺に相談しろよ!」

「えー。」

用意されたビーチチェアに寝転がって諏訪は堤に言いがかりをつけていた。
どうも部屋割りがアリスと一緒だったことを根に持っているらしい。

もちろん、諏訪としてはアリスと同室なのは歓迎だ。
家でも一緒だが旅行というとまたいつもと違う雰囲気を2人で楽しめるのもいい。
だが皆があからさまに自分とアリスをセットに見ているのが何だか恥ずかしいというか、照れくさい。
付き合っていないからなおさらだし、なんならちょっと憐れみさえ感じる。

「いい加減にアリスをどうにかしたらどうだ、諏訪。」

「あ、お前それ俺のジュースだろ!」

いつの間に来たのか、風間が諏訪の横でチューチュー言わせながらドリンクを飲んでいた。
しかもどうも自分のドリンクではないらしい。

「どうにかってどういう意味だよ。」

「わかってるだろ。いつまでもふわふわするな。」

そういうと風間は行ってしまった。
あからさまに不機嫌になった諏訪を残されて堤はため息しか出ない。

「お待たせしましたー!」

「あ、加古ちゃん達だ。」

堤がどうしたものかと思案していると、遠くから加古の元気な声が聞こえてきた。
ようやく着替えやその他準備が終わってきてやってきたようだ。

「加古さん、水着似合ってるー!」

「そうでしょー?迅くん!」

加古の水着姿に口笛を鳴らすのはビーチボールを膨らませていた迅だった。

「洸ちゃん、洸ちゃん!」

そんな中ビーチチェアに寝転んだ諏訪に影を作ったのはアリスだった。

「どうどう?水着似合うでしょ?」

「っ!」

アリスはそう言って諏訪の前でクルリと回ってみせた。
その姿に諏訪は少し頬を赤くする。

アリスは胸も大きくナイスバディで。とは言えない。
背は小さいし、胸も大きいわけではない。
しかしそこは惚れた弱みというやつか、普段見ない姿にドキドキしてしまうのは仕方のないことだ。

「あれ、似合ってないかな。」

諏訪からの反応がないので、アリスは声を小さくして顔をうつむかせた。
諏訪は慌てて弁明する。

「んなわけねえだろ!似合ってる!加古なんて目に入らねえよ!」

「あ、諏訪さんひどーい!」

「うるせえ、加古!」

諏訪の暴言に加古は口を尖らせる。
しかしそれが諏訪のただの照れ隠しだとわかっているので気にすることもなかった。

「よかったぁ!」

諏訪の言葉に満足するとアリスは加古や橘高のもとに走っていった。

「ったく。似合ってねえはずねえだろ。」

諏訪が頬を赤くして再びビーチチェアに寝転がると、東が諏訪にドリンクを差し出した。

「大変だな、幼馴染っていうのも。」

「ホントですよ。」

諏訪は手渡されたジュースのストローにかぶりつく。
それは乾いた喉に甘く染み渡るオレンジの味がした。










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2019.01.11
諏訪さん連載17話目更新です。
年明けて真冬真っ只中ですが、作品の中では真夏っていうかんじ。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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