ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


広がった青空を思わず恨めしそうに見上げた。

何よ、晴れるなら朝から晴れてよね!





続々・散歩道にて





「いやー、やっと晴れたね!梅雨でもないのにホント嫌になるぐらいだったねー。」

「ホントだよねー。」

帰りのHRも終わり、鞄の中に教科書を詰め込みながら友達と窓から空を見上げた。
ここ最近ずっと雨続きで、三門市全体が何だか鬱々としてた気がする。
そういうあたしもその一人。

「アリス、雨だと元気ないもんね。」

「晴れてよかったじゃん!」

「うん。」

あたしは雨の日に結構頭痛がするタイプで、大体天気の悪い日は元気がない。
でも今はそれ以外にも理由があった。

(嵐山さんともう一週間も会ってないなー。)

そうコタローくんのリードが切れて、連絡先を交換したあの日。
翌日から土砂降りの雨が一週間も続いた。
季節は梅雨なんかとは縁のない春も近づくころだというのに、何でこんなことになるのか。
小降りぐらいだったらシェリーと普通に散歩に行くが、さすがに危ないかなと思うくらいのすごい雨だった。
嵐山さんとは河原で会っていたから余計にだ。

『しばらく雨が続きそうだな。残念(。-_-。)』

なんて連絡が来た時は残念がってくれていることに舞い上がってしまったが、こんなに長く会えなくなるとは想像もしていなかった。
正直乙女としては辛い。

「帰るよ、アリスー。」

「あ、うん!」

ボーッとしている間に置いて行かれてしまい、慌てて私は友達を追いかけた。




「今日は帰りどうするー?」

寄り道の計画を立てながら校門へ向かう途中、何人かの別の友達が私達の横を駆け抜けて行った。
よく見れば校門のあたりが騒ついている。
何事かと走っていく友達を捕まえて事情を聞くと有名人が誰かを待っているらしいとのこと。
何だ、それは。有名人って。
その捕まえた友達は誰がいるとも知らないのに、とりあえず見に行くとのこと。
どうせ通り道なのであたし達も遠巻きにその有名人とやらを拝んで帰ることにした。

「あ、おーい。アリスちゃーん!」

そこにいるのが嵐山さんだとも知らずに。

「へっ?!嵐山さん!?」

完全に気を抜いていたため、変な声をあげてしまう。
慌てて口を押さえたがもう遅い。
友達からも、野次馬達からも注目の的だ。

「よかったー、まだ帰ってなくって。」

そんな周りの視線も気にせずに嵐山さんはスタスタと近づいてきた。
真っ直ぐあたしに向かってくるところを見るにお目当ては最初から私だったようで、あたしは大いに混乱した。

(何で?!っていうか恥ずかしい!ああ、でも久しぶりに会えたの嬉しい!やっぱりかっこいい!)

「あ、嵐山さん、どうして?」

「いや、今日折角晴れたからさ。散歩に行かないかなと思って。」

その声に反応して嵐山さんが肩からかけている鞄がゴソゴソと動いた。

「わん!」

「コタローくん!」

鞄から首だけを覗かせるコタローくんを、久しぶりだったのでついわしわしと撫で回してしまった。

「新しいリード買ったのに、ずっと雨だっただろ?こいつ散歩行きたくて仕方ないみたいでさ。」

嵐山さんもコタローの頭をぐりぐりと撫でる。
その仕草を見るのも随分と久しぶりであたしは思わず頬を緩める。
嵐山さんはそんな私から視線を友達にずらし、でも、と続けた。

「友達と約束があった?やっぱいきなり来ちゃまずかったかな?」

困ったように頬を掻く嵐山さん。
約束は今からしようとしていたところだ。
でもここで寝返ったりするのは友達を裏切るような感じがして嫌だ。

「あ、あたしらのことは気にしないでください!」

「今日はそのまま帰る予定だったんで!」

返事を困っていると先ほどまで一緒に寄り道の相談をしていた友達2人がそう言ってあたしの背中を押した。
私はびっくりして2人を振り返る。

『明日ちゃんと説明してもらうからね!』

『元気ないの雨のせいだけじゃなかったんだね!』

何と優しい友達だろう。
あたしは2人にありがとうと言うと嵐山さんにかけよった。

「悪いね、2人とも。ありがとう!」

「じゃあまた明日ね!」

あたしは嵐山さんとその場を後にした。





嵐山さんとあの後家に立ち寄りシェリーを連れ出していつもの河原に行った。
家族が留守だったので嵐山さんを目撃されることなく、すんなりと出かけられてホッとした。
お母さんとかいたら絶対うるさいもん。

2匹が遊んでいるのを見ながら河原で座って話をする。
天気が良すぎたのか、地面はすっかり乾いていた。

「それにしても突然だったので驚いちゃいましよ!」

「あはは、ごめんごめん。」

そう、嵐山さんはいつも突然だ。
出会った時も、名前を呼んでくれた時も、今日も。
でも嫌な気分はしない。
むしろ嬉しさが余りあるぐらいだ。

「コタローくん、はしゃぎ回ってますね。」

「シェリーも大概だよ。」

そう言って2人で笑う。
ああ、幸せだ。幸せの瞬間だ。

「新しいリード使ってあげられて良かったですね。」

「ああ、アリスちゃんが選んでくれたやつだから、初めに使うのはやっぱり一緒が良かったしね。」

そう言って笑う嵐山さんにドキッとして思わず顔を背ける。
ああ、今顔赤くなってるよ、しばらくはシェリー達を見る振りをしておこう。

「…ねえ、アリスちゃん。今度また散歩しない?」

「もちろん!」

元気に返事をしたのはいいけど、はて、と思いとどまる。
出会ってから今まで、こんな確認をされたことはない。

「どうしたんですか、改まって。」

何かあったのかと心配になって聞いてみると。

「明日からは晴れるらしいのでいつも通り…。「いや。」

言葉を遮られて、そして。

「今度は2人でさ。」

デートに誘われてしまった。

「えっ!?」

「シェリーとコタローは家で留守番。俺と2人で散歩するのはどう?」

そう言って優しい笑みを携えて手を差し出される。
そんな風に誘われては断れるはずもなく。

「よ、喜んで。」

あたしはそっと嵐山さんの手に自分の物を重ねた。










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2015.4.22
散歩道も3話目です。
なかなか終わりませんね、この散歩(笑)

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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