「ごめん。俺、好きな奴いるから」

そう言うと、「そっか、頑張ってね」と笑って彼女は足早にその場を立ち去った。
体育館裏だなんてベタ所に呼び出されて、告白だなんてベタな展開になり、正直笑うしかない。これは今年何度目になるのかと頭の中で彼に告白してきた子の人数を思い出していると、背後から首に腕が回された。

「見てただろ?後つけてきたの?」
「見てたよ。偶然だから。離せ馬鹿」

肘で腹を突けば、咄嗟に飛び退く彼、御幸一也。当たってないぜ、なんて言いながら笑う彼にイラッとする。どうしてこいつはこんな性格なんだろう。

「随分とおモテになるようで。早く付き合っちゃいなよ」
「なぁに言ってんの。俺が他の女子と付き合ったら嫌な癖に」
「え?聞こえないんですけど?」
「意地張んなよ」

意地悪く笑う彼。もうほんと、苛々する。

彼は私に『御幸が好き』って言わせたいのだ。
私は私で、そんな彼が好きだったりするものだから尚更苛々してしまう。何でこんな性格悪くて友達もいないようなやつを好きになってしまったのだろうか。考えても考えても、好きになってしまえば頭では理解できなくて、つい反発してしまう。

一年生の頃に知り合って仲良くなった彼は、それはそれはモテる奴で、去年の秋だったか、私は彼に「好きな子いたりとか、付き合ってみようかなって子はいないの?」と聞いた。すると彼はため息をついて「みょうじって鈍いのな」と言った。どういう事か分からずにいたら、ある日突然言われたのだ。

「他の誰から告白されても、みょうじが好きって言ったら、俺はお前と付き合う」

教室の掃除が終わって帰ろうとした時に背後から急に言われて、わけがわからずぼやっとしていると、「じゃ、そういうことで」なんて意地の悪い笑みを浮かべて言って去って行った。理解したのは完全に姿が見えなくなってから。その日から御一也が気になりだして、上手く喋れなくなってしまった。そんな私のにちょっかいを掛けてくるのが腹立たしくて、絶対に私から好きって言ってやんない事にした。

「素直になれば?」
「何の事?」
「俺、他の子と付き合っちゃうよ?」
「勝手にどうぞ」
「なまえって性格悪いよな」
「御幸に言われたくはないよ。つか、名前で呼ぶなし」
「何?ときめいちゃう?」
「殺意がときめくわ」
「はっはっは!恐ろしいな」

こんな言い合いをして、どちらが先に素直になれるのか。まるでゲーム感覚の恋愛で、我ながら馬鹿らしいとは思うのだけれども、ここまで来たら引くに引けない。


好きっていったら、負けなんだ。

prev next
back


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -