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ペットショップからの帰り道。
わたしの首元には真新しい首輪がついていた。たまこと刻印入りのネームタグと鈴がついていて、一目でお気に入りになった。
お店でつけてもらったときにはくるりと一周して、どう?と侑士に自慢もしたよ。

家に帰るまではバスケットに入れられるから、窮屈なのもあるけど、家の鏡で首輪をつけた自分を見たいから、早く帰りたいなぁと思う。

「たまこ見える?お友達がたくさん居るわぁ」

バスケットごしに聞こえてきた侑士の声に、ちらりと外を見る。
空き地には猫がたくさん集まっている。
ほとんどは気持ち良さそうに寝ているけど、なんだか猫の集会所みたいで楽しそう。

「みんな集まってかわいいなぁ。あ、けどたまこが1番やで」

うん、楽しそうだけど、わたしも侑士といるのが1番好きだよ!
…けど、誰かお友達とお話、いつかしてみたいなぁ。

明くる朝。ちゅんちゅんとスズメが今日も鳴いている。
ぺろぺろと侑士の顔を舐め回す。
おはよう、侑士!起きて起きて。

「んーもう!たまこ!こしょばいて!起きる、起きるからやめて」

寝起きの侑士はいつもより声が低い。
低血圧って言うんだって。

「まだアラーム鳴ってないのに…」

そんなの知らないよ、わたしが起きたんだから侑士も起きてよね!
侑士はまだ寝ぼけ眼のまま、わたしの背中を撫でる。
しばらくそうしていたけど、ベッドから抜け出たあとは、侑士はきびきびと動き出す。

まずは窓を開けて換気する。
顔を洗って歯を磨いて私服に着替える。
そしてわたしにごはんの用意。
朝の準備が終わると最後にコーヒーで一服する。
侑士は朝ごはん食べないんだって。
わたしは口をもぐもぐさせてたけど、侑士が立ち上がると一旦止めて、玄関までついて行く。

「ほなたまこ行ってくるわ。ええ子にしといてな」

ドアが閉じる音に引き続き、鍵の回る音がした。
侑士が帰ってくるまで、何してようかな。
…とりあえずごはん食べよう。

ごはんを食べ終わって部屋をうろうろしているときに気づいた。
窓が開いている。
いつも侑士は換気が終わったら窓を閉めるのに。
窓の隙間から顔を出すと、爽やかな風が顔に当たって気持ちいい。

わたしはちょっと考える。
1人でお出かけなんてしたことないし、外より家が安全って知ってる。
勝手に出て行ったら侑士が心配するし。

けど…。
侑士が帰ってくる前に、部屋に戻ってきたらいいよね。
わくわく心が止められず、わたしは部屋を出てお散歩をすることにした。

3階の部屋というのも、ねこのわたしにはなんてことなく、するりと道に降りて歩き出した。

塀の上を歩いていると、見たことないものがたくさんあった。
赤ちゃんをカゴに入れて押して歩く女の人、テニスボールより何倍も大きいボールを持って走る男の子たち、おじいちゃんに連れられていた犬は礼儀正しく「こんにちは!」と挨拶してくれた。

初めての世界が楽しくて、どんどん進む。
そうして歩いていると車がたくさん通る道の向こうに、ねこがいるのを見つけた。
青い目が綺麗なヒマラヤン。
お話したら、お友達になれるかな。

「ねぇ、ちょっと待って!」

叫ぶけど全然聞いてくれない。
車が止まってから道を渡って追いかける。
向こう側に来たけど、あれ?いないや。
きょろきょろ見回して、くんくんと嗅ぐ。
こっちの方かな?
あの子が行った方と思われる道をわたしは追いかけた。


20200515