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いつだったか付き合っていた彼女と別れたときには侑士は荒れていたこともあったけど、今では良い思い出になってるよ、だなんて話したりして。ここ数年は穏やかな日々を侑士と過ごしている。

1日の流れがなんだか早くなったように感じる。
侑士と一緒にテレビを見ていると、歳を取ると時間が経つのが早く感じるんですよってオスの人間が話していた。

侑士に拾われてから10年以上も経った今、そりゃあわたしも歳を取ったよなぁなんて思う。
だからあっという間に1日が終わるのか。

侑士に動物病院に連れられるときにすれ違った子ねこからは「こんにちは、おばあちゃん」なんて言われたりして。ほんとに失礼しちゃう!

だけど侑士は昔以上に「好きやで」って話してくれるし、毎日変わらずちゅーもしてくれる。
だからわたしもお返しに「好きよ」と答えて、鼻をぺろりと舐め上げる。

前よりジャンプもうろうろ歩き回るのも億劫になってしまったから、わたしは日がな1日窓際で日光浴に勤しむ。
お日様の光にぽかぽか照らされたわたしの身体はなんだかいい匂いがする気がする。
証拠に侑士もわたしの身体に鼻を押し付けてくんくんと嗅いだりするよ。

最近の侑士は朝も昼も夜もわたしにべったりで、なんだか子どもみたいに甘えてきてかわいい。
可愛いって言われるのはわたしの専売特許なはずなのになぁ。

今日も侑士はわたしを膝に抱きかかえて、長いこと毛並みを撫でていた。
ふふ、気持ち良いでしょ?人間がわたしのこのもふもふさらさらな毛がすごく好きだなんてこと当たり前に知ってるんだから。

とくに侑士は岳人よりも謙也よりもわたしを撫で上げるのが好きなんだからね。

「たまこ」

なぁに?
意味もなく名前を呼ばれる。
侑士にとってはわたしが隣にいることが当たり前で、無意識に名前を呼んじゃうじゃないかな。

ごはんの時間になると、昔より噛んで飲み込むのがしんどいから、ゆっくりと時間をかけて食べる。
侑士が食べさせてくれるからか、いつもと同じフードなのに美味しく感じるよ!

寝るときも侑士のベッドで一緒に寝るの。
これは昔からずっと変わらないから、別になんてことはないんだけど。
けれど侑士の人肌に触れて眠るのは安心するから大好き。

まだ侑士は眠くないのか横たわらずに、ベッドの上でわたしを抱っこしてくれる。
侑士にとってわたしがいるのが当たり前のように、わたしにとっても侑士がいるのも当たり前なんだよ。

侑士の太い腕に手を伸ばす。爪でひっかいてしまわないように慎重に。
すると侑士はその腕で抱きしめて、じっと見つめてくる。
子ねこのときから変わらない、優しい瞳も大好き。
今日も侑士と一緒に過ごせて幸せだったよ。

ああ、なんだか眠いなぁ。抗おうとしても、瞼が重くなってきちゃう。
もう寝てもいいかなぁ?
侑士の胸の中で眠るの、とっても幸せ。

「たまこ、おやすみ」

意識の遠くでいつもの馴染んだ落ち着いた声が降って来る。
侑士大好きだよ。ずっとずっと、大好きだよ。


20200526 END