06


肩が外れるくらいに強い力で引っ張られるのに顔をしかめていると、「ぼくより彼らのほうが好きなの?」と聞かれた。

否定以外の答えを許さないような声色だったので、いいえ、そんなことはと濁す形になりながらもそう答えるしかなかった。

「それならよかった。たとえロウガだとしても、或音だけは渡したくないからね」

どこかの恋愛小説のような言葉のはずなのに恐ろしく思えるのは私の思考のせいか、それとも彼の行動のせいか。

キョウヤさんは昔から、他人のことをもののように扱う癖がある。元来の性格はもとより、財閥の総帥としての教育を施されてきたせいもあるだろう。
だから今の言葉も、私にとってはまるでお気に入りのおもちゃを取られたくない子供のように聞こえた。

しばらくそのまま身を預けていると、あるドアの前に着いた。見覚えがある、というよりはいつも見ているそれは、私の目の前に迫るように存在している。なんともないただのドアがひどく恐ろしかった。

「おいで」

有無を言わせない威圧感がひしひしと伝わってくる。たぶん、いや確実に、さっき見つかったせいでイライラしているのだろう。そうなれば、その苛立ちの矛先がどこへ向かうかなんてわかりきっている。この部屋に入ったが最後だと。

考えすぎて足がすくんでしまい、動けなくなった私を彼は抱きしめるように持ち上げ、部屋の中へ連れて行った。抵抗しようにも力がうまく入らないのはいつものこと。それに、反発したらその分だけ返ってくるということも、よくわかっている。

ベッドの上に投げられ、衝動でスプリングが跳ねる。視界の端から彼がにじり寄ってくる。諦めて何も身構えずにいたら、突然両手首に嫌な感触がした。
ガチャガチャと、衣擦れとは違う音が聞こえる。まるで金具が擦れて音を立てているような、そんな音。

「もう逃げたりしたらいけないよ。ほら、或音のために特別に作ってもらったんだ。これで安心だね」

弾かれるように両手を見ると、ベルトのようなものが巻き付けられ、今にも二つを合わせてしまおうとしているところだった。

「やめて、ください」

掠れた声で主張しても彼には届かない。必死に抗ったけれど敵うはずもなく、あっという間に両手首が括り付けられてしまった。
もはや一つになった手はベッドの端と縄で結ばれ、自由に動けない。まさかこんなことになるなんて、思ってもみなかった。

「あまり暴れたら傷がついてしまう。こんなに綺麗な肌をしているのだから、跡になってしまったらかわいそうだ」

もっとも、跡にならないくらい軽い傷しかないのは腕というよりはひじより手先側と膝より下だけで、それ以外は赤黒く腫れ上がっていたり、青い痣が浮かんでいるのだけど。

しかし彼はそんなことも忘れてしまったようで、拘束具で縛り付けられた部分を優しく撫でてくる。

せめてもの反抗で両手を動かせるだけ動かすと強く押さえつけられた。どうやら撫でていた手に金具の部分が当たったらしい。

「……そんなに足掻いても無駄だよ。逃げられるはずないんだから」

さっきより一つか二つトーンを落とした声で囁かれ、体がぞくりと震えた。どれだけ動かしても金具が虚しく音を立てるだけで、むしろ私の手首を押さえつける彼の手の力が増しているだけだった。
これ以上の抵抗は無意味だ、本気でそう悟り、腕の力を抜いた。

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