02


シーツとシーツの間から壁に掛けてある時計を見る。まだ夜明け前と呼べる時間だと分かったので布団を頭まで被り、二度寝をしようとした。

なのに、マットレスが揺れたような気がして、ついびくりと肩を震わせる。彼が何時に起きるのかは聞いていないから、今起きたっておかしくはない。
一気に眠気が覚めたように気が張り詰める。それと同時に、腹痛がした。
きっと昨日一番強く殴られたところだと考えたところで、あれは夢じゃなかったんだと絶望する。

「或音、起きたの?」

昨日の出来事が頭をよぎって、つい目を閉じて寝たふりをしてしまった。
だけど彼の声はいつものように優しくて、ちゃんとキョウヤさんが帰ってきてくれたんだとすぐに分かった。

今更起き上がることもできなかったから、布団を引っ張り小さな声で答える。

「はい、おはようございます。もしかして、起こしてしまいましたか?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどね。なんだか早く目が覚めちゃって。朝食でも摂ろうかと思うんだけど、或音はどうする?」
「いえ、私はいいです。今日はあまり体調が優れませんので……」

目が合うはずもないのに目を逸らす。
おそらく顔は赤く腫れ上がっているだろうし、こんな姿をキョウヤさんの前に晒すわけにはいかない。たとえそれが彼の手によるものだったとしても。
キョウヤさんには知らないままでいてほしいと思うのは、私のエゴだろうか。

「すまない、一緒にいてあげられたらいいんだけど、あいにく今日も仕事でね。何か或音の好きなものを買ってこようか、何がいい?」
「……私は、キョウヤさんがくださるものなら何でもいいです。お仕事、大変そうですから、あまり根を詰めすぎないでくださいね」
「ふふ、君にそんなことを言われるなんてね。分かったよ、今日はなるべく早く終わらせるつもりだったんだけどな」

そう言っている声を聞きながら、頭を撫でられる。
キョウヤさんはとても優しい人で、昨日のあのことは嘘だったんだ。まるで、私にそう刷り込むかのように。
なのに鈍く痛む頭や体がそれを邪魔する。

「じゃあ僕は朝食を食べて今日の準備をしてくるよ。或音のことはエルフにでも頼んでおくから、今日はゆっくり休みたまえ」

キョウヤさんの手が止まり声が遠ざかったと思ったら、ドアが閉じる音がした。
昨日とは違い、気を遣って優しく閉じられた音。
嘘をついたという罪悪感でほんの少し心が痛むけれど、キョウヤさんの優しいところが見られて良かったのかもしれない。


足音が聞こえなくなるのを確認してから起き上がろうとしたのに体がまだだるくて、結局二度寝をすることになった。

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