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さっきの通りに再び戻り歩けば、すぐに大きなドーム型の建物が見えた。天井の装飾は太陽を模していて、それが相棒学園のファイティングステージだということはすぐにわかった。

生徒のように振る舞え、とロウガさんに言われ、少し固くなりながらも慣れた様子で歩く。長い敷地内を何度も曲がり進めば、ひとつの部屋の前で立ち止まった。

「入れ」

そこには確かに、生徒会室、と書かれていた。ロウガさんはともかく、私のような部外者が入っていいのだろうか。そう聞こうとしたところで、答えは返ってきた。

「心配いらん。ここの生徒会長は祠堂だ」

加えて副会長はあの女だ、と伝えてくれた。孫六さんと行動を共にしているといえばソフィアちゃんなので、とりあえずは一息つく。そういえば、キョウヤさん以外の人としばらく会っていなかった。ずっとあの部屋にいたからというのもあるけれど、それだけじゃないようにも思えた。

そばにあったソファーに恐る恐る腰掛ければ、ロウガさんが何かを持ってきてくれた。聞けば、部屋にあったたこ焼きらしい。
まだ温かいことから想像するに、できてからそう時間が経っていないということだろう。かすかに香る美味しそうな匂いが空腹を思い出させた。

パックに同封されていた割り箸を割り、うまくつかんで口へ運ぶ。中の生地は外よりもずいぶんと熱く、やけどをしそうな程だった。こんなに温かいものを食べたのは久しぶりだ。

なんとか咀嚼して喉でその熱さを感じれば、たった1個食べただけだというのにお腹がとても満たされたような気がした。

ひとつひとつを味わうようにゆっくり食べ、最後の1個まで食べ終えれば、来い、と言われた。

そのまま行けばロウガさんはどこかを押し、すぐに床の一部分が開いた。よく見れば側面にははしごがついている。部屋の床より数m低いその場所には、いかにもといった感じの岩の壁と、それとは似つかわないふかふかのベッドが置いてあるのが見える。
促されるがままにはしごを降りれば、さっきの部屋よりも少しひんやりとした空気が流れていた。

思わず身震いをしてから、あたりを見渡す。上からはよく見えなかっただけで、そこには簡易冷蔵庫など最低限の生活はできるような設備が整っていた。

「ここならキョウヤも知らないだろう」

ここに住め。そう言う事なのだと、察した。詳しく話を聞くと、この場所は孫六さんが独自に作ったものでここの存在を孫六さん、ソフィアちゃん、ロウガさん以外に知るものはいない。加えてこの学校は天野鈴コンツェルンが設計・施工したものなので、キョウヤさんがこの場所を知る余地がないとのことだった。

それでも見つけ出してくるのがキョウヤだ、と呆れたようにロウガさんが呟く。
ここもずっと居られるわけではないと、分かっていた。壁の凹凸を指折り数え終わるのと、ここを出ていくのとどちらが早いのか。それは、誰にもわからない。

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