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あの街から離れて別の街に降りる。もう寂しさも、父母と住んでいた家を探す気持ちも消え失せていた。未練はない。だってあそこは、もう私の帰る場所ではない。

「もう、いいのか」
「いいんです。それより、これからどこに行くんですか」

問いかけても答えはない。物思いにふける様子のロウガさんに自分を重ねながら、自然と足を動かしていた。

超東驚自体には慣れているはずなのに、ここがどこなのかは全く分からなかった。こんな場所、本当にあったのだろうか。目に入った看板を見る限り、学が丘のあたりらしい。目的地としては来たことはなくても、よく耳にする地名だ。

そういえば学が丘には相棒学園があったはずだ。ロウガさんたちはここに通っていると聞いている。だから、私が知らないような道も知っているのだろう。そう考えれば、この足取りにも納得がいく。
少なくとも道に迷うようなことはなさそうで、ほっと息をついた。

時々角を曲がる背中を見失わないよう追いかけながら歩けば、先ほどまでより人が増えてくる。今までは大人ばかりだったけれど、ここには私より幼い子が多い。学校帰りにしては身軽すぎるし、遊びに来るにしても時間が早い。貼ってあるポスターにはバディファイトのモンスターが描かれていた。

「お前はここへ来たことがなかったのか」

私と対照的に慣れた様子で歩いていたロウガさんが、進行方向に顔を向けたまま話しかけてきた。淡白ながらも気遣ってくれたらしい問いかけに頷いて返事するも、見えていないのだと気づいてすぐに声に出す。

「はい。学が丘のあたりにはあまり立ち寄ったことがなくて」

子供達が楽しそうにバディファイトをする姿を目に留めながら、隠すかのように右裾に入れて持っていたロキのカードを撫でる。こうしてこれだけたくさんの人がファイトしている姿を見るのは初めてだ。
あの場所で誰かがファイトをしているのを見かけたことはあったけれど、ここの子供たちほど無邪気に遊んではいなかった。どちらかといえば、あそこで行われるファイトには殺伐という言葉が似合う。

私もファイトしたいな、と思ったところで、デッキを置いてきてしまったことに気がついた。
キョウヤさんからいただいたものとはいえ、デッキには愛着が湧いてしまっていたから、もう一緒にファイトできないのだと考えると苦しかった。

せめて、ロキだけは手放したくない。
右手をしっかり握り、ふいに落としてしまわないようにすれば、同意し頷くかのように手の中でカードがかすかに動いた。

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