ゴボッ…






暗闇の中、怪しげな光を放つ大きなカプセル。その中に、鎖でつながれた一人の少女


まだ、七歳にも届かないであろうその少女は、人間の希望だった。


酸素ボンベとつながるマスクで息をして、時折手首につながれた管から栄養分が流し込まれる。


少女の体を構成する細胞一つ一つが、他とは比べ物にならないほど強靭なもの。そして、その細胞が覚醒するであろうその時まで、ただ静かに、カプセルの中で長い長い時を過ごした。



己が何者であるかさえもわからぬままに。











そして、運命の時は来た。白衣をまとった男がそのカプセルに歩み寄り、真剣な面持ちで手元のパネルを操作し始める。

ピッピッピッと言う無機質な電子音が響くのを、カプセル越しに見つめる少女は、回転しきっていない頭で考えた。





この人は、誰だろう。





暫くして、その手が止まる。男は何かにすがるようにカプセルを見つめた。どうか、どうか、今度こそは。今まで、幾人失敗してきただろうか。


これでまた失敗したら、政府はまた軍事力の増強に力を注ぐことだろう。科学力に頼り切った、ひ弱な軍隊が奴らに勝てる筈はない。




だから、自分は作るのだ。最強の生命を。





ゴポリ…とカプセルの中で気泡がはじける。それを目にした男は、ゆっくりとパネルに触れた。





―――――ロック解除。





感情も何もない機械音が響き、ゆっくりとカプセルの中の水が抜かれていく。そして、中から現れたのは、一人の少女。ゆったりとした動作で目を開けた少女は、ぽつりと呟いた。





「……やっと、だしてくれた」





その瞬間に、男の表情が歓喜に満ち溢れる。成功だ。遂に、遂に成功したのだ。最強の生命体を作り出した。



やっと、やっと……!!!



歓喜に打ち震える手を男は少女に差し出した。









「お前の名はリベラ。………人類に残された最後の希望だ…っ!」










リベラと呼ばれた少女は、こてんと首を傾げると目の前に差し出された男の手を見つめる。



そして、思った。















物語の



――――なんてほそいうでをしているんだろう。




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