隠れた光を探せ
「おい、G。ラピスを知らないか?」
「いや、見てないが……どうかしたのか」
眉根を寄せて尋ねてきたジョット。今までラピスが無断で外に出たことなどなかったし、いなくなったこともまた然りだ。
ランポウと遊んでいて屋敷の中で迷子になったことは度々あったが、屋敷の中でだけだ。
日も暮れて、月が顔を出した。
明日はラピスの誕生日で、皆仕事を終わらせようと机にかじりついていたため、今の今までラピスがいないことに気が付かなかった。
もしや、敵マフィアに連れ去られたのかと嫌な予感が頭をよぎるがすぐさまそれを否定する。
そんなことはありえない。
ラルドが早々に仕事を切り上げてラピスの部屋に向かっていた。ラルドも強い。みすみす敵に捕まるなんてことはないだろう。
「何故、こういう時に限って使えないんだっ!!」
いつもなら知りたくもない事まで知らせてくる、この身に宿る血が与えし能力。
他の者たちから超直感と呼ばれるそれは、まるで何かに遮られるように真実を見せることをしない。超直感が使えればすぐにでもラピスの居場所を突き止められるのに。
何故だ、何故。必要な時に仕えぬ能力。
こんな時にしか、自分の持つ力は役に立たぬと言うのにとジョットは拳を握りしめる。
「いかがなさいましたか、ボス」
「ラルド!!!!ラピスを知らないか!!」
自分に対する怒りに震えるジョットの傍に、何処からともなく現れたラルドが歩み寄る。
一番最後にラピスと接触していたであろう人物の登場にジョットは我を忘れてラルドに詰め寄った。
「ラピス様ですか…?」
「居なくなったんだよ」
腕組みをしながらGが言う。おそらく最後にあったのはお前だとGが言うと、ラルドは顔を青くした。
「まさか、私がおそばを離れたせいで……」
「ラルド、今は責任云々を言っている暇はない。それで、ラピスの傍を離れたのはいつだ?」
「はい、お部屋にお邪魔してすぐにお腹が空いたとおっしゃられたのでいつもの様にお菓子を作って差し上げようかと……」
今の今まで街にいました。そう言って、眉を下げるラルドの手には確かに菓子を作る材料であろう袋を持っている。そして、ラルドは勢いよく頭を下げた。
「申し訳ありません!!私が、私がおそばについていれば……!!」
心からの謝罪。
悲痛に声を震わせてそう言うラルドを誰が疑うだろうか。そう、ボンゴレのボスであり超直感を持つジョットでさえも気づかない。
「いや、気にするな。侵入者に気が付かなかったのは俺の落ち度でもある。一刻も早く、ラピスを探し出すんだ!!」
そう言って、ジョットとGは走り出す。
頭を下げた男の肩が、笑いをこらえ震えているのに気付かぬままに……
「これで、暫くは安泰か……全く超直感も大したことはない。このような小細工ひとつで使い物にならなくなるとはなぁ……」
この時から、ラピスの捜索が始まった。だがしかし、情報は何一つ得られない。
突如として消えた小さな少女。皆が皆表情に出しているわけではないが、確実に焦り不安に駆りたたされていた。
幾日も過ぎ、まだラピスは見つからない。
各々の部屋の居場所を失ったプレゼントが置かれている。
誕生日は、とうに過ぎた。ラピスの誕生日を、皆で祝おうと決めていたのに。
さらに幾月かがすぎ、辺り一面が白銀に染まる。
年を越してもラピスが見つかることはなかった。
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