闇の中に取り残される





ゆっくりと、闇の中から意識が浮上する。思い瞼を持ち上げてみると、目の前に映ったのは錆びた鉄格子。そして、小さなろうそくの明かりが照らす石造りの小部屋。背中に感じる冷たい感触から、自分は壁に寄り掛かるようにしているのだろうと予想する。


立ち上がろうと冷たい床に手をつくとジャラと重苦しい金属音が響く。両手首にはそれぞれが部屋の両脇につながれていて、一定の場所でしか身動きが取れぬようになっている。

ためしに鉄格子に近づこうとしてみても、鉄格子に手が触れそうになると枷がラピスの動きを封じる。






「ここ、どこ……」






足にも手首と同じような枷が付いている。歩くのも一苦労だ。鉄格子に触れようと小部屋…牢の中を行ったり来たりしていたラピスの体力は限界を告げていた。


対して動いてもいないのにとラピスは思うが、そういえば妙に頭がもやもやする。おそらくまだ意識を失った時の衝撃が残っているのだろう。






「考えるの……」






幼いころから母に言われていた。自分たちの一族は少し特殊だから命を狙われることもあるのだと。その時は、何者かにつかまってしまった時は、考えなさいと言われた。



『考えるの。どうすればいいか。どこかにすきはないか。そう簡単には見つからないと思うわ。でも、見つかるまで考えるの』




母の言葉を脳内でリピートしながら必死に頭を回転させる。逃げられそうな窓もない。鉄格子だけがと部屋を作る石壁がラピスと外界とを隔てている。


カツカツ…と場に似合わぬ音が響く。そして、その音はラピスの閉じ込められている部屋の前で止まった。






「お目覚めの様ですね、姫君」





冷たい目を輝かせて笑う、男がそこにいた。

かつて、信じた男。でも今ではもう恐怖の対象でしかない。

ラピスは襲い来る恐怖に身をすくめる。



怖かった。



ラルドに対して言い知れぬほどの恐怖を感じた。

そして、ラルドが告げた言葉にさらにラピスの恐怖をあおる




「さ、参りましょう」


「ど、こに」















―――――貴方の持つ能力を有効活用して差し上げます




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