Real2



私は、普通の中学生。

並盛中学っていう、いかにも平凡そうな名前の学校に通っている。

いつもの通学路、いつもの町並み、いつもの晴れ渡った大空。

でも、それとは裏腹に私の心は沈んだままだった。

夢の中、斬り付けて殺そうとした青年の面差しが脳裏によみがえる。

夢の中の私は、今の私とは違うのに、まったく別の存在なのに、何故だか罪悪感に囚われてしまう。

沈んだ面持ちのまま歩いていると、いつの間にか学校に着いたようだ。

慣れとは恐ろしいもので、入学当初はしょっちゅう迷っていた学校までの道も、今では、ただ歩を進めているだけで着いてしまう。

そのまま、まっすぐ教室に向かうと、途中でツナ達と合流する。



「おはよ」



後ろからそう声を掛けると、まず初めにツナが振り返った。



「あ、ラピスちゃん!おはよう」

「よう!今日は遅いんだな」



その屈託の無い、山本の笑顔。いつもなら、ほほえましい物なのに。

今日は胸の奥に、何か引っかかる物がある。



「ちょっと、ね]

「お前、何かあったか?」


獄寺が、聞いてくる。

そこには、本当に単純な疑問しかなかったんだろうけど、何かを察したツナが、慌てていった。



「ご、獄寺君!!」



いいたくない事なら、無理して言わなくていいから!と、動揺しながら言う。

・・・何で分かったんだろ?

まぁ、気にしないことにしておいて、ツナ達と並んで歩き出す。

真ん中にツナが居て、その左に山本。右側に獄寺。そして、私は獄寺のさらに右側にいる。

だから、左側を見ると、三人の顔がいっぺんに見える。






ドクン






胸の奥で、何かが脈動する。



獄寺の顔。




ツナの顔。




山本の顔。




ドクン、ドクン

脈動は次第に速さを増していく。


そして、脳裏に浮かぶ、あの、顔。

金色の、髪。オレンジ色の瞳。・・・・・・それぞれの色は違うけど、思えばツナにとてもよく似ている。

はっとして、隣の獄寺と一番向こうに居る山本の顔をよくよく見てみれば、似ているではないか。

獄寺は、赤い髪の、頬に痣のようなもののあった青年に。

山本は、烏帽子を被った、和服の青年に。



似ている、というレベルではない。

同じ、だ。

顔のパーツのそれぞれがまるで生き写し。色が、違うがそれでも、よく似ている。




ドクン、ドクン、ドクン、ドクン




脈動がどんどん早くなっていき、目尻から涙が滑り落ちる。



「ラピスちゃん、どうしたの!?」



私が涙を流している事に気づいたツナは、何が起こったのか訳が分からず、あたふたとしている。



「おい、大丈夫か?」



さすがの獄寺も、こういうときは優しい。

足を止めて、私の様子を伺ってくれる。



「何かあったのか・・・?」



山本が、そういって暖かい掌を私の頭にのせる。

そして、頭を撫でられた事で、気が緩んだのか、涙は次から次へと流れてきた。


頬を伝って流れ落ちていったそれは、廊下に当たってはじけた。




涙。




トクン・・・トクン・・・

流した涙に比例するように、脈動は少しずつ収まっていく。



「ご、ゴメン・・・・」



廊下で、泣き出していたことに気づいて、慌てて目元をぬぐう。

ツナ達は、大丈夫と言ってくれたけど、私の様子がおかしいのは、目に見えて分かっていただろう。

特に、ツナは、何も聞かないでいてくれた。

私が、話したくないのを、分かってるみたいに。





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