少女が運ぶもの





「ジョット、一体こいつはいつになったら目覚めるんだ?」



我慢の限界に達したのか苛立ちを隠す様子もなくGが少女に殺気を飛ばす。雨月が慌ててそれを止めるが、その前に部屋の戸が開け放たれた。



「ねぇ、侵入者って聞いたんだけど」


「おや、随分と可愛らしい少女がいるじゃありませんか」


「勝手にアジトにこんな奴連れこむなんてどういうつもりだものね」


「うむ!究極意味が分からんぞ!」



次々と幹部の人間たちが示し合せたように入ってくる。だが、スペードとアラウディが不機嫌そうに殺気を飛ばしあっているところを見るとそういうわけでもなさそうだ。

ジョットは一つため息をついて少女の頭を軽くなでる。すると、アラウディとスペードさらにはGまでもが得体のしれない奴に何をしていると言いたげな様子で、小さな少女に殺気を飛ばす。ジョットは、少女が泣きわめいてしまうのではないかと思い三人を止めようと声を出そうとしたその時。


むくりと、小さな少女が突然起き上がった。







「……あれ?」





殺気が自分に向けられているのにもかかわらず、ここどこだろー?などと言って首を傾げるラピスは見ていて微笑ましいのか何なのか。

くるりと視線をめぐらせて、ある程度自分の状況を理解したのか、小さな少女は寝かされていたベットの上に居住まいをただしてちょこんと会釈をする。





「初めまして。あの、貴方がボンゴレファミリーのボスのかたですか?」




四歳の少女の口から出たとは思えないほど丁寧な言葉にその場にいる全員が、アラウディとスペードでさえも軽く目を見張る。ラピスは届け物を渡そうとリュックを開こうとするが、そういえば背中に重みを感じない。

頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら、よたよたと背中に手を伸ばしているラピスを見たジョットは少女が捜しているものの見当がついたのか、脇のテーブルの上にあげておいた荷物を少女に渡す。





「これだろう?」



「え?…あ!ありがとうございます」




またぺこりと頭を下げる少女。そして、リュックの中身を漁ると、小さな黒い箱を取り出した。







「私は、ラピス。皆様に、ボンゴレリングをお届けに参りました」











部屋に、暫くの沈黙が走ったのは言うまでもない。


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