砕けた想いと石
ゆっくりと、操り人形のような動作でラピスが立ち上がる。
そして、ゆっくりと手を前方へ突き出すと口の中でなにやら呪文のようなものを唱える。瞬時にして、ラピスの手を七色の炎が包み込み、それと引き合わされたかのように黒い炎が渦を巻く。
その場にいる全員が、一度臨戦態勢に入ったが、はたりとラピスが手を下したのを確認し、武器を下す。
「へぇ〜空間も捻じ曲げられるんだ」
緊張感のない声が辺りに響く。先ほどまで黒い渦があったところに居て、きょろきょろと面白そうにあたりを見渡しているのは、紛れもない、白蘭だった。
「な!?テメェ、何でこんなところに居やがる!」
「え〜ラピスチャンに呼ばれたから?」
へらへらとした様子で返す白蘭に、獄寺が牙をむく。その事態を巻き起こしたラピスは興味なさげに、その様子をただ瞳に映した。そして、呟く。
「二度目の裏切り。死を持って、あがなう」
その場にいる全員が、目を見開く。
ゆっくりと、何処からともなく現れた美しい装飾の施された金色の刀。それは、見る見るうちに形を変えると、小さな短剣へと形を変える。
ゆっくりと、その短剣を胸に差し入れられようとする。
ツナが、ザンザスが、ベルが、フランが、その場にいる全員が反射的にそれを止めようと手を伸ばすが、それは白蘭に阻まれる。
「邪魔しないでよ。これは、新しい世界への第一歩なんだ」
「何?」
ザンザスが、片目を眇めてそう言う。短剣は、その刃先をラピスの中に埋めた。
「これ以外のパラレルワールドだと、僕が世界を手に入れてもすぐに滅んじゃうんだ。ボンゴレはみ〜んな滅びて、ラピスチャンだけが生き残ってて。だから、ラピスチャンが死なないことには、世界を手に入れてもすぐに壊れちゃうんだよね〜〜」
ほら、それじゃつまんないでしょ?と白蘭は笑う。
ラピスの胸に、短剣が全て埋められた。
爆発的な力が辺りを包み込む。
恐ろしいほどの力の奔流。ラピスの身の内に隠されていた力。
力の奔流が巻き起こっている時、地球の上で、21個の何かが、砕ける音が響いた。
だが、それに気づくものはまだいない。なぜなら、突然自分たちの中に入り込んできた、ありとあらゆる映像に意識を奪われてしまったから。
それは、ラピスの生涯だった。
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