消えゆく闇は奪い去る



ラピスの行った白蘭≠ニいう名前にそこにいる全員が目を見開いて息をのむ。その中で、苦いものをのまされたような顔をしているのはラピス。

だが、その様子が無線越しに伝わるはずもなく外にいると推測される白蘭はさも愉快そうに話し始めた。



『そこにいるってのはちょっと違うかな?僕の実体はここにないし』



そして、ラピスは合点の行ったような顔になって、また厳しい表情に戻る。恐らく白蘭が使っているのは、ホログラム。ミルフィオーレほどの科学力があれば不可能なことではない。ホログラムの投影機を部下に持たせ、それを介してこちらと接触することなど訳ないだろう。



「何の用…?」



静かに、冷たい口調でラピスが無線越しに白蘭に問い掛ける。



『ちょっと忠告にね』



そう言って、一旦言葉を切ると次の瞬間思いもよらない言葉を口にした。



『このままいけば君は死ぬ。それが嫌だったらもう力は使わないことだね』



一瞬、ラピスの思考が凍りつく。

何故、こいつが知っている。

自分が闇と契約したことを、そして闇が…………消え去ったことを。

もとより死ぬ、など自分が最も縁のない言葉だ。心のうちに生まれた深い闇と契約を交わすことで手に入れた、絶対的な力と、それに耐えうる滅びぬ体。

そんなラピスにとって死など恐れるに値しないものだった。今の今までは。



「まさか…」



ばっと慌てて胸に手をやると、どくどくと異常なまでに速く鼓動を刻んでいた。

不意に、額から滑り落ちてくる汗。今まで、力を使っただけで、こんな状態になったことなどないというのに。





何故、という至極単純な思考が頭の中で走り回る。

こんなにも早く、死は訪れるものなのか。






『君の中の闇、消えたんでしょう?だから、君はもう…』





その言葉の先は言わずとも知れている。ラピスの中からラピスの生をここまでつなぎとめてきた闇が消えた今、ラピスの時は再び刻まれ始めた。

そして、命を削ることでその本質を見いだせるという死ぬ気の炎の境地。それを再び使えば、間違いなくラピスの体はそれに耐えきれずに消滅する。



今までのラピスを形成してきたのは闇だった。



ラピスの中にある、仲間を救えなかった自分へ対しての自責の念。そして、何が何でもボンゴレを守り通さなければならないという、執念、

それは、闇に値するもので、闇に住まうものが好むもの。

故に、ラピスは力を手に入れた。自分の時と引き換えに、自分の安らぎと引き換えに、絶対の力を手に入れた。

だがそれは、闇あってしてのもの。
















そしてその闇は、消え去った。

不吉な言霊を残して。

闇が消え去った今、少女の時を止める者は、もうない。




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