聞こえぬふりをするのは簡単で
静かに、開け放たれた扉の向こうへと歩を進める。
大丈夫、そう自分に言い聞かせて顔を上げる。
「ラピス……」
あぁ、やっぱり。似ている。くるりと辺りを見回してみても、守護者と思われる人物皆が皆、彼らを生き写しにしているようだった。
「久し…ぶりだね」
十年前を懐かしむ様にツナは悲しげに微笑む。ラピスは少しだけ悲しげに眼を伏せると静かにこぶしを握り締めた。
「何…ですか」
喉の奥に何か引っ掛かっているようで上手く喋ることができない。まるで、これ以上彼らと関わることを拒むように。当たり前だ。もし、私が敵と彼らに判断されたら?
もう、失うのは嫌だ。
知らず知らずのうちにラピスが握る手の力を強くする。
どんなに時がたっても、私は弱い。
小さくて、何もできやしない。
「大丈夫だよ…」
いつの間に近づいていたのか、ツナがすぐ近くまで来ている。恐る恐る顔を上げると、柔らかく微笑むツナがそこにいた。
「俺たちは、ラピスを裏切ったりなんかしないから」
その瞬間に、ラピスの中で何かがはじける音がした。まるで、自分の中から闇が消え去ったかのような。
滞っていた全てを塗りつぶす闇が、やっとどこかへ飛散していく。
そして、それが意味するものは。
「お見通し、か」
ジョットだってそうだった。いつでも、持ち前の超直感で私の言って欲しいこととかすぐ見抜いて…
「ごめんね…」
ぽつりとつぶやいたラピスの謝罪に、ツナは黙って謝らなくていいと言ったが、彼は、その場にいた全員はまだ気づいていない。
彼女から闇が消え去った時何が起こるのかを。
そして、ラピスは、ヴァリアーをボンゴレを守るべきもの≠ニして認識した。
仲間ではない。何故?自分が仲間を失うのを毛嫌いしているのと同じ。皆、仲間を失うなんて嫌だろう。自分の思いこみなのかもしれないが。
けれど、彼らに仲間を失わせることはしたくない。そして、今、私が仲間になったら……
彼らと話して思い知る。
私が恐れていたのは、これだったのかもしれない。
アレだけ死という逃げ場を求めて置いて、いざとなったらそれがどうしようもなく恐ろしい。
闇が消える直前につぶやいた言葉に耳をふさぎながら。
―――――性懲りもなくまた信じるのか……まぁいいさ。お前はもうすぐ消える。それだけだからな……裏切りの中で死ぬ苦しみ、思い知れよ。なぁ、終焉の守り人さん?
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