dream2

「ククク…そらみろ、大空も斬れば死ぬ」



お前が殺したんだ。暗にそう告げている声。満足そうにそういった声は、夢の中の私の心の奥深い所に巣を作る。


そして、言った。



――――今日からここが、僕の居場所だ。せいぜい足掻くことだな。



そして、その声を合図にしたかの様に、夢の中の私が崩れ落ちる様に膝を付いた。



「これで……これで満足か……!!」



苦しそうに、何か喉の奥からせりあがってくる感情を必死に押しとどめながらお嗚咽を漏らすようにして言う。


悲しいと叫んでいる。


夢の中の私はずっと叫んでる。


苦しい、悲しい。でも、それを言葉にしてしまったら自分がひどく弱くなってしまうように思えて、誰にもそれを言えなかった。


だから、誰も気づかない。


少しずつため込んできた負の感情が夢の中の私の中でどんどん大きくなっていっていたことに。



――――満足…か。なら、もう一仕事してもらおうかな?



心の隙間から入り込んでくるような、低い声。こちらが拒絶しても、のらりくらりと中に入り込まれてしまう。


もう一仕事、そう聞いて私の体は震え始める。


次は、何を失うのか。そう思うと、恐ろしいほどの恐怖が膨れ上がっていく。



「何…」



呟いた声は、小さくて今にも消えてしまいそうだった。



――――その男、まだ息があるな。



声がそういった途端、私はびくりと肩を震わせる。目を見開いて、唇をかみしめる。


唇が裂けて、血の味が口の中に広がったがそんなこと、気にしている暇はなかった。


夢の中の私は思う。


だって、殺すことなんてできやしない。



――――殺せ。



その思いを断ち切らせるかのように響く低い声。それはまるで、お前に反論する余地はないのだと言っているようで。


震える手。必死に刀を握りしめて、倒れて血を流している男の頭の上に持ってくる。


カタカタと、刀が震えて思うように手が動かない。でも、意を決して刀を勢いよく振り上げる。



「ゴメン…」



呟いた、小さな言葉。心の奥の、誰にも聞こえないところで、夢の中の私はそう呟いて、一粒雨を降らせる。


雨は、青年の頬を伝って地面に落ちた。


ゆっくりと、刀を振り下ろそうとした時。






「待て!!!」



聞きなれた、懐かしい声。あれ?今まで聞いたこともない声に何でこんな感情を抱くのだろうと不思議になるが、すぐに納得ができた。


夢の中の私はこの人たちと知り合いだったのだ。


そして、ひどく安心していた。


ありがとう。と夢の中の私は何度もつぶやいていた。





赤い髪の頬に痣がある青年。

「おい、ジョット!しっかりしろ!!」





烏帽子をかぶり和服に身を包む青年。

「どうしたでござるか…!」





短い黒髪で鼻の頭に絆創膏をつけている青年。

「俺は、俺は究極にお前を許さんぞ!!」





緑色の髪の他の人たちより少し年若く見える青年。

「やっぱり、裏切ったんだものね…」





厚手のコートに身を包んだ切れ長の瞳をした青年。

「君…わかってるよね?」





そして、見慣れない髪型をした青年。

「ヌフフ…遂に正体を現しましたか…」





夢の中の私が責められている。それもそうだ。きっとこの人たちは、さっき切った人の仲間なんだ。


私とは、仲間じゃない。


そう自覚した途端、涙があふれる。


もう、失った。


でも大丈夫。


私は、貴方達を信じています。


貴方達を守って見せます。


たとえ、貴方達が私のことを裏切り者だと言っても。








私の仲間は、貴方達だけだから。






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