脆い媒体と強すぎる力
幹部たちが食事をする部屋に行くと、与えられた席に座る。
…何故だか、ボスの座っているところに一番近い席だ。
「あらん?」
一足早く食事を始めていたルッスーリアが、ラピスの手元に目をやって不思議そうに首をかしげる。
「ラピスちゃん、リング光ってるけど、こんな時まで炎出してたら疲れちゃうわよ?」
その言葉で、全員の視線が一気にラピスの手元へと集まる。
そして、その視線の先にあるのは淡い紫色の燐光を放つリング。ゆらゆらとゆらめく様に光るそれは、見るものを引き付ける何かがあった。
「…炎、出してるつもりはないんですけど」
そういうと、フランが席を立ってラピスに近づく。
ちょっと失礼しますーと言ってラピスの手を取り、その指からリングを抜き取った。
すると、その途端にリングから放たれていた光は一瞬にして消え去り、また私の指にリングをはめると光りだす。
「…これは、完璧に炎出てますよー。無自覚ですかー?」
フランは、無表情だが他の幹部たちは唖然とした顔で食い入るように私の手を見つめている。
今までは、これが普通だったが、これは普通じゃないのだろう。
リングというものが一般のマフィアに出回るようになる前から、人との関わりを絶って生きてきたから、普通の感覚が少しずれているのかもしれない。
一人でそんなことを考えて見るが、炎を出しているつもりがない以上、この燐光を抑えることなどできやしない。
どうしたものかと、一人考えているとスクアーロが大声で叫んだ。
「う゛お゛ぉい!!!今ので炎出してねェっていうんなら、炎出してみろ!話はそれからだ!!」
「確かに、無意識で炎だしてる子なんてあったことないもの!意識して炎出したらすごいに決まってるわね!!」
見せて見せてと、期待を込めた目で言うルッスーリア。でも、本気で炎を出せばリングは砕け散ってしまう。というか、本気でなくても大概は壊れる。
ラピスは、リングを壊さない程度にと、必死に神経を尖らせながら、徐々に炎を強めて行った。
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