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時は平成X年辺り。いや、もしかしたらY年とかかも知んないけど、さして物語に影響はないので気にしなくてもいいのだ。
という訳で、今日もある二人の騎士に守られるナミモーリ。そこに、不穏な影が近づいていた……
「ふはははははは!!ここナミモーリはこのカエデ様がのっとった!!さぁ、跪くがいい愚民ど…」
「ちょっと、カエデ。それ台詞違う。君のセリフこっち」
「え、嘘。あ、ホントだ。ゴミンゴミン」
「自分の立場をよく理解してるね」
「私がゴミだってか!?」
仕切り直しである。
「さぁ!このナミモーリを危険にさらす悪党どもはどこかしら!この私がぶち殺してあげましょう!!」
正義のヒーローらしからぬ物騒なせりふを吐くこの女、ナミモーリを守る騎士が一人カエデ。ちょっと頭が残念だが、物凄く強いし親しみやすいので町…あ、違う。ナミモーリの住民たちに好かれていた。
得意技は、力任せタックル。苛々パンチ。投げやりキックetc...
「ま、僕のナミモーリの風紀を乱すようなら……何人たりとも咬み殺す!!」
……この人が意外とノリノリなのに吃驚したのである。あ、ちなみにナレーションは管理人なので口調がおかしいのつっこまないように!
ゴホン、まぁ気を取り直して。
全身黒尽くめでいかにも悪者ですオーラを放っているこの男。実はナミモーリを守る騎士の一人ヒバリである。本名はヒバリンというのだが、そう呼ぶと切れるので命が惜しくば呼ばないのが賢明な判断だ。相方は何度も殺されかけている。
得意技は、咬み殺すアタック。ゴッドキル。ヒバードアタックetc...
そんな二人に、このナミモーリは守られているのである。
あと、題名に刺客参上と書いておきながらまだ刺客が出てこないのは気にしたら負けなのである。
アホなので、計画性とか知らないのである。
さて、ここで一旦ナミモーリとその近隣諸国の勢力図を把握して置こうと思う。というか、説明させてください。
まずは、ナミモーリ。ツナ・サワダの支配する小さいが平和すぎるくらい平和な、国民の三分の二が平和ボケしているという何とも呑気な国なのである。そして、そのナミモーリ今更ながらに気づいたのだ。
あれ?俺らこのまま敵国に攻め込まれたらヤバくね?
そこで、タッグを組まされた精鋭。
かねてから最凶と謳われていた男ヒバリンことヒバリ。
そして、腕相撲で200人抜きした後に、へらへら笑いながら大量の荷物抱えて家に帰ったというカエデ。
「え、ちょ、何!?私の肩書だけちょっとださくない!?贔屓?ひーきってやつですかコレ?」
「あ、カメラ回ってるって」
「さぁ!今日も美しいナミモーリ守り抜こうではないか!はっはっはっはっ!」
「うざ」
「酷いッ!!」
とまぁこんなかんじで、え?何こいつら漫才コンビ?とか言われそうなやり取りをさっきからずっと繰り広げているのである。
ぶっちゃけ精鋭とか言っちゃったが、対して仕事ないのだ。ナミモーリは今日も平和です。
「ふっふっふ!いつまでも平和な毎日が続くと思うなよ!そのうちすごいことが起こる予定だからな!」
「まぁ、間違って台本読んじゃったしね」
「それは触れちゃダメェえええ!!」
「ふはははははは!!ここナミモーリはこのスクアーロ様がのっとった!!さぁ、跪くがいい愚民どもよ!!」
そこへ現れた恐ろしい脅威!!長い銀色の髪をひるがえし、颯爽と現れた一人の男。そして、まさか台本通りのセリフを言って貰えると思っていなかったのでびっくりした。すごくびっくりした。そして、あの黒髪赤目のボスさんがまさかこいつを影武者に使ってくるとはびっくりである。
「工エェェェ━━━Σ(○・Д・○)━━━ェェェエエエ工 」
「んだテメェ!!」
「いや、まさかいかにも俺ボスだぜが押して出てきた敵が実は本物のボスの影武者だったっていう新事実が発覚して心の底から驚いているのであります、スクアーロ君!!」
「初対面なのになれなれしいなお前!」
「ちょっと、さっきから僕全然話してないんだけど。気に入らないんだけど。咬み殺していい?」
刺客も持ち前のアホさで翻弄してしまうのがカエデのすごい所。ほめてあげて。カエデちゃんはほめられて伸びる子なの。
「というか、初っ端から影武者だとかどうとかって何で分かるんだぁあああ!!」
「そりゃ、天の声がおもっきし行ってたの聞いちゃった!テヘ」
……………
「はい、沈黙はやめよー―!!可愛くも何とも無いのは分かったから沈黙はやめよ!」
「ふ、テメェらの国も此処で終わりだぁ!!大人しくヴァリアー帝国の支配下になってもらうぜぇ!!」
「うわぁ、ひねりのない名前」
「さすが、猿は格が違うね」
「馬鹿にしてんのかテメェらぁああああ!!」
「「当たり前でしょ/だよ」」
意外とこの二人息が合うのである。ちょっと違う言い方をすると、ヴァリアーのスクアーロ氏が不憫なのである。
ところ変わってヴァリアー帝国。
「しししっスクアーロの奴あっさりばれてやんの」
暗い影が話す。それは、サスペンスドラマとかでよくある敵の黒幕たちの秘密会議的な場面を想像してほしい。けっして、説明するのが面倒だとかそう言うのではない。ただ説明できないだけなのだ。
「まぁでも、向こうも結構バカみたいだよ。こっちの仕掛けた隠しカメラにぜんぜんきがついていないみたいだしね」
「あらん?女の子の方が、こっちジー―とみてない?」
「きのせいじゃねーの?」
そこで改めて映し出される映像を見てみる。
見ている。確かに見ている。
物凄いキラキラした瞳で見つめている。
――「いんちょじゃないや。ヒバリ!見てみなさいこれ!隠しカメラ!刑事ドラマみたい!カッコイイ!!」
「あら〜気づかれちゃったみたいね――」
「ま、中々勘は働くようだね」
「しししっでももー遅いんだよなー全部筒抜けだし。見つけたところで、どうしようって…」
前髪金髪と言えば皆さんご理解いただけるだろうか。物語の進行上名前はまだ出ていないので、そうだな。仮にMKさんと呼ぶことにしよう。
次の瞬間、MKさんは目を見開くことになる。
――「えー刑事ドラマだとこういうの見つけたらどうするんでしょー」
――「知らないよ。僕に聞かないで」
――「う゛お゛おおおい!テメェらオレを無視してんじゃねェ!」
画面の向こうの少女が顎に手を当ててうんうんうなって考えている。そして、次の瞬間目を輝かせた。
――「爆弾処理する!!」
拳を天高々と突き上げた少女。爆弾でもなんでもないのにどうしようというのだろうか。アホなのだろうか。アホなのだ。
「ぶはっ!」
「ぼ、ボスが…」
クララが立った!と同じくらいの感動なのではないのだろうか。
ボスが、笑った!!
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