※久々知視点





五年生に上がって幾月、そいつは急に現れた。
学園長が拾ってきたという男。




「初めまして、藍です。宜しくお願いします・・」




本当に忍者を目指して入学したのか分からない程のおどおどした態度に思わずため息を吐きそうになったのは今でも覚えている。





「兵ちゃん・・!」

「藍、どうした?」

「あのね、今日美味しいお団子屋さんをしんべヱに教えてもらって・・その・・・」

「いいよ」

「え!?」

「行きたいんだろ?俺で良ければ付き合うよ」

「あ、ありがとうっ!!」






今ではこうやって二人で出かけたりするほどの友人になった。
嬉しそうに抱き着くこの男を、そこらの女の子よりかわいいと思ってるあたり俺はどうかしてるのだろうか。

ふわふわな髪の毛を俺の胸板に押し付ける姿はまるで猫。


いや、こいつは猫でもあるんだ。


詳しく話すとめんどくさいから省略するけど、半分人間。
そして半分猫又という妖の血が混ざっているらしい。


これは忍術学園全員が知っている事で、特に害もないからと最初は警戒していた上級生や俺たちも気にしなくなった。






「んー、藍日向ぼっこしてきたのか?」

「えっっ、なんで分かるの!?」

「草の匂いと、太陽の匂いする…いい匂い」

「にゃ!へ、兵ちゃん!!」

「あ」





いい匂いがしたから肩口に鼻を埋めたら体をビクつかせて俺から離れた。
顔を真っ赤にして、抱き着いてきたのはそっちなのに。


藍は恥ずかしそうに視線を暫く彷徨わせ、猫みたいな大きい瞳を俺にやっと向けて学園の外を指差した。

言いたいことはわかるけど、なんでか湧き上がる加虐心に首を傾げて見せた。
まるで言いたいことが分からないという風に。





「だ、団子っ!はやく行こう…!」

「あぁ、そうだったな」

「兵ちゃんの意地悪っ!」

「はは」





なんかもうほんとコイツ可愛い。

とりあえず自室で私服に着替えれば、二人分の外出届を持って部屋の前で座っていた藍に話しかけて学園の外を指差した。






「じゃあ行こうか」

「うん!!あのね、兵ちゃんが好きな豆腐屋さんも近いから帰り寄ろうね」

「…うん」





い組に入れた理由がなんとなく分かった気がした俺だった。









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振り回すつもりが振り回される兵助。




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