私の彼氏は、人気者。
大学に入って私が一目惚れした人は男にも女にも好かれる。
友人にはヘタレと言われた私だけど、自分なりに精一杯努力して思いを伝えた。
お陰で恋人となれたのだけど、
『勘ちゃん』
「んー?」
『好きだよ』
「うん、俺もー」
金曜日の夜、勘ちゃんは私の家に泊まりに来る。
何をするわけでもない、ただ私の家に居るだけ。
今だってずーっとケータイと見つめあって、私なんか眼中に入ってないの。
『…ね、ねぇ』
「あ、藍ー。先風呂入っていい?」
『え、あ…どうぞ』
「ありがと。てか何か言い掛けてなかった?
『ううん。何でも、ないよ』
やっとケータイから目を離した勘ちゃんは私の言葉を遮ってお風呂場を指差す。
にこりと人好きな笑顔を浮かべて聞いてくれるけど、何故か言い出せなかった。
(本当は、もっと近付きたい)
勘ちゃんはそっかって言ってお風呂に行ってしまった。
家に置いてある彼の服を取りに寝室へ行って、脱衣場に脱ぎ捨ててある服の代わりにそれを置く。
洗濯機に入れようとした瞬間、ふわりと香る勘ちゃんの匂い。
『っ、』
ふいに涙がぼろぼろと溢れ出した。
寂しい、もっと側に居たい。なのに私はいつまで経っても一定の距離を保ったまま彼を見つめているだけ。
「藍?」
『か、勘ちゃん?!』
「どうした?」
いつの間に背後に居たのか、下半身をタオルで巻いてあの独特な髪から雫を滴らせ立っていた。
泣いていたなんて思われたくなくて、持っていた勘ちゃんの服を洗濯機に入れながら涙をぬぐう。
きっと、うざいと思われるに違いない。
側に居られればいいじゃないか、そう自分に言い聞かせる。
『何でもないよ、洋服のタグ確認してただけ。ほら、明日雨みたいだから乾燥機かけても大丈夫かなって』
「…ねぇ藍」
『あ、私食器の片付けしなくちゃ!勘ちゃんはゆっくり暖まって出てきてね』
肩を掴んできた勘ちゃんの手を柔らかく外して、一方的に話し掛け脱衣徐を出た。
壁一枚隔てた所に出ると、勘ちゃんは小さくため息をついてお風呂に戻っていく音が聞こえる。
『っ…ぅ、』
再び流れ出す涙。
嫌われてしまったのだろうか、呆れられてしまったのだろうか。
今まで勘ちゃんの事で泣いたことはなかったのに。
近付く別れに、気付いてしまったのかもしれない。
だって彼には、他に何人もの彼女がいることを私は知ってる。
『勘ちゃん…』
分かってたんだ。
いつかは必ず、別れが来るってことくらい。
だから、せめてその時まで側にいさせてください。
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勘ちゃんが最低に…!!!
いや、しかし核心的なことはあまり書いていないのでそんな事はない、と信じたいっ…
管理人は勘ちゃん大好きですよ!!でもたまにはこんなのもいいかな、と←
気が向いたら勘ちゃんサイド書こうと思います!
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