※押し倒すシーンがあります





「なぁ藍」

「何?手拭い冷たくなくなっちゃった?」

「それもある」





あれから手拭いを自分で持たせると藍はやることがあったのか、薬を煎じている。
伏せられた睫毛が異様に色っぽくて目をそらしながら、出された菓子に手を伸ばし声を掛けた。


藍は一度作業を止めて私に笑顔を向ける。

…何で呼んだのか自分でも正直分からなかったからとりあえず頷く。






「甘えん坊だね、三郎」

「っ、」

「よしよし、俺が今冷やしてきてあげる」

「…藍、お前わざとか?」

「ん?」




這うように此方に着て頷いた私を甘やかすように首下を撫でられる。
腰の辺りが疼くと同時に顔に熱が上がって、視線を床に落とした。


いつの間にか私から手拭いを取っていたこいつはお桶に浸して絞るという動作を繰り返してる。





「…これは、やばいな」

「何が?」

「んー、興奮した」

「え"っ…んにゃっ!?」

「お、猫っぽい」





やや此方に背を向けるような藍の背中にのし掛かって頭巾を外した隙に、綺麗な項に唇を寄せた。

てっきり艷めかしい声を出してくれると思ったのだが、発したのは猫っぽい鳴き声で。
頭を打ち付けないようゆっくりと押し倒したお陰でたいして暴れずにそのまま下から私を見上げる。






「…は!ちょっと、三郎何するのさ!」

「だから言ったろ、興奮したって」

「へ、…っ」

「…大人しくなったな。まるで借りてきた猫みたいだ」





喉を鳴らして笑えば、私に組しかれた藍は目を見開いて固まった。

男が男を押し倒すなんて、こいつの頭には衆道なんてもんがないのだろうか。なんて考えながら、抵抗されないのをいい事に藍の腰ひもに手をやる。






「藍…」

「さ、三郎?やめよ…?なっ?」

「いやだ」

「で、でででも」

「お前に拒否権はない」

「君もだよ、鉢屋三郎?」






藍を組み敷いたまま段々と近付く顔の距離に待てを掛けるように聞こえた、低い声と漂う殺気。

これ、は…






「善法寺、伊作先輩…」

「あっ、伊作先輩お帰りなさい!」

「ただいま藍。さて、三郎は医務室に何の用なのかな?」

「いや…頬を冷しに…」

「あはっ、冷しに来たのに下を熱くしてどうするのさ」

「…っ!?」

(この人えげつないな)





満面の笑みで言い放った保健委員会委員長、善法寺伊作先輩。
顔を真っ赤にした藍が私の下から這い出すのを仕方無く見送り、体を起こした。

こうなってしまっては諦めざるを得ない。





「冷やすくらい自分で出来るから、もう帰って大丈夫だよ?三郎」

「分かりました」

「あ、三郎…!」

「何だ?」

「俺にあんな事しないで、雷ちゃんにしてあげなよ!」






一瞬全ての時間が止まった気がした。






「…は?」

「ぶはっ!!!」






藍を守るように立ってた先輩の唾が顔にかかったけど今はそんな事どうでもいい。

そんな事より、今コイツは何て言った?






「え、ちょ…藍今何て」

「あははははは!!!!」

「いや、笑い事じゃないですよ!」

「?」

「は、はははっ!三郎、そう言うことだから早く雷蔵の所行っておいで!」

「お、押さないでくださいよ!っくそ、藍お前覚えてろ!!」






涙が出るくらい爆笑している後ろで呑気に首傾げてる藍に向かって叫んだ。

何故私が雷蔵を押し倒さなければならないんだ!!







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自覚ありな押せ押せ三郎も天然の前にはたじたじ。
藍くんは他人の性に関して照れない。
と言うか変なことを言ってるとかは思ってない無自覚さん。


ここまで拍手してくださった皆さんありがとうございました!!





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