「お…終わった」
『うん!!』
翌朝、俺たちは帰路を辿りながら背伸びをした。
あの後怪しまれることもなく情報収集を終え、後は帰るだけと思っていたら、なんと間の悪いことに屋敷が実習の対象達に襲われ助ける事態にまでなってしまった。
情報収集の実習だったのに普通に盗賊退治にまで発展してしまい、評価は大丈夫なのかと心配する俺に藍は軽く大丈夫と笑って。
「しかし藍があんなに強いとは思わなかったよ」
『そう?』
「あんな戦い方するなんて…」
藍は
刀使いで、袋槍も使いこなすくのいちだった。
その姿は豪快で、なんだか俺よりも男らしかった気がする…
ぐったりする俺の手を取り機嫌がいい彼女は始終笑顔。
『たっくさん暴れられたし、兵助と付き合えたし嬉しいことばかりの実習だったなー』
「前者はわからないけど、後者は俺も思うのだ」
『へへ!』
「でもさ、前から知ってたって本当?」
ぶっちゃけ気になってた事を聞いてみようと顔を向ければ彼女は大きく頷いてた。
…なんでだろう。
心中で思った筈だったのに見透かされているのか、くのいちの装束に着替えている彼女の桃色が目の前いっぱいに広がる。
『兵助がよくこっちを見てたから!!』
「それだけ?」
『あと…まあ秘密!』
「え、気になる」
『えへへ、それだけ私が兵助を見てたってことだよ!』
ふわりと風が吹いて嬉しそうに笑う藍に思考が止まる。
まさか、彼女も俺を見ていてくれたなんて。
気づかなかった俺は忍たま失格だろうか。
でもそれ以上に、嬉しい。
『さ、帰ろう!』
「あ、あぁ…なあそれって藍も俺のこと」
『わーわー!もうこれ以上は絶対言わない!』
「わ、こら待て!」
ぱっと離れた彼女の髪が浮いて、距離がいっきに遠くなる。
ふと、屋敷を出る時にあの門番が言ってくれた言葉が浮かぶ。
「今は夫婦じゃないけど、いつか本当に子が出来たらまた来て欲しい」
そう言って俺たちを見送ってくれた名も知らない門番の人。
…いつか、本当に夫婦になる日が来たらまた会いに行きたい。
こんな俺たちをまるで自分の子供に向けるような優しい目で見送ってくれたあの人に。
「藍!」
『なーにー?』
「いつか、またあの屋敷に行こう!」
少しだけ小さくなった背中にそう叫べば意味に気づいたのか離れた所からでも分かる位に赤面した彼女が小さく頷いた。
いつか、俺がこの学園を卒業して強い男になったらその時は…
君を嫁にもらう。
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短編なのに長くなるこの文才のなさには涙が出ます←