『さあ…兵助、死合おうか』
「宵月…」
『六年生と、お前以外の五年生は皆死んだ。さて、下級生は全員無事だといいな?』
「………ーーー、す…っ…!!!」
『なんだ?』 「殺すっっ!!!!!」
俺の頭にはもうそれしかなかった。
目の前には変わり果ててしまった彼女。 愛していた、心から。 守りたかった。なのに、 なのに…
「お前は、皆を裏切った!!!!」
思い浮かぶのは彼女を信頼し尊敬していた後輩たちの姿。 自分の1つ上の先輩たちが彼女を慕っている姿。
そして、俺達を心から祝福してくれていた仲間の笑顔。
『いい顔をするようになったな、兵助』
「軽々しく…俺の名を呼ぶなっ!」
寸鉄を回転させ突き出しやすい持ち手に変え、接近を試みる。 彼女の武器、鉄糸は近接も遠距離も可能の武器。
下手をうってあの鉄糸が首に巻き付けば俺の首など簡単に飛んでしまう。 そして少しでも当たろうものなら人の皮なんか余裕で裂ける。
大袈裟に放たれた鉄糸を避けた。 的確に俺の行動を読んだ彼女のそれは俺の頬を切る。糸が飛ぶのは尖端に小型の苦無がついているため。
しかしそれは一度放ったら戻るのには多少の時間が掛かる。
手慣れていて早いとは言え、一瞬の時間が出来る筈だ。
「もらった…!!」
『踏み込みが甘いんじゃないのか?』
「っ、!?」 『まだ…本気を出せないか』
手に持っていた鉄糸を離し、袖から姿を現した暗器を何とか交わして再び距離を置く。
これは、暗器用の針。細い針だが使いようによっては殺傷能力もある武器。
だけど、
「まだ、だっ!!」
暗器を仕込んでるのは俺も同じだ。何年彼女と一緒に居たと思ってる。 元々寸鉄を得意とする俺はそれなりに服の中へ暗器を数種類仕込んでいる。
苦無を懐から取り出し彼女へと投げた。
本気じゃないかどうかなんて、そんなの分かってるだろ。
もし出来る事なら、生きて彼女を捕らえたい。 だから本気で掛かってるつもりなのに、体が追い付かないんだ。
『捕らえようと思っているのなら無駄だぞ』
「宵月…」
『殺す気で来ないと私を捕らえる所か1つの傷も付かないぞ。それでも五年生か?』
「…やめ、ろ…やめろ!!!!!」
『そうだ、私を憎め。お前の友を殺した、私を…っ!!!』
無我夢中だった。 苦無を投げ、その後ろに隠してひょう刀を投げる。
彼女はそれを寸前で交わしたが、少し掠めたのか目の下に赤い線が入り、何故か腹の辺りで鮮血が散った。
そんな所、俺は投げてないのに。
でも確かに聞こえた、俺が微塵を放ったと同時に何かも放たれた音と大きな爆発音。 そして火薬のにおい。
『時間か』
ポツリと彼女が呟いた。
割れた紫
(何が起こったのか、理解ができなかった)
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