皆に励まされて、絶望の縁にいた俺は実習に出れるくらいにまで復活していた。
今回は各班ごとに別れて、ある城の内情を探る忍務。 残念なことに仲いい奴等とは同じ班にはなれなかった。
「やけに罠が多いな」
ポツリ、と呟く。 広大な城の回りには数々の罠が張られている。それは当たり前なのだがそれにしては数が多過ぎる。
一つ下の綾部と比べたらまだ軽いくらいだが、やはりそれらを察知して避けるには時間がかかる。
「それにしてもおかしいな」
静かすぎるのだ。 これだけ大きな城ならばそれなりの忍を雇っている筈なのに、何の気配も感じない。 あるのは多すぎる罠のみ。
ふと自分に近寄る気配を感じて苦無を構える。
しかしその気配は敵ではなく、同じ班の一人だった。そいつの顔は青ざめただ事ではないと感じて言葉を待つ。
「大変だ久々知…忍術学園が、何者かに強襲された」
「なん、だって」
俺は目を見開いた。 あの忍術学園の土地は確かに城主ならば保有したいとは考える。
しかし学園の底知れない力と忍術学園の学園長の幅広い人脈により手を出す阿呆は早々居ない。
ドクタケやドクササコなどは置いておき、どこの者だろうか。
兎に角俺は伝えに来てくれたそいつにスピードを合わせることなく全力で学園に戻る。 聞くところによると、五年の中でこの知らせを受けたのは俺が最後だと言う。 と言うことは勘右衛門や雷蔵に八左ヱ門、三郎が既に戻っているはず。
それに今回の実習は五年のみだったから、六年生が忍術学園に居ると言うことだ。
でも何故かこの胸騒ぎは静まるどころか激しさを増すばかり。
あの城の静けさも気になるところだが、今はそれどころじゃない。
忍術学園につく頃に、何処かの忍が下級生を襲っている。
一瞬で相手が本気と悟り俺は下級生が怖がらぬよう殺気を圧し殺して持っていた苦無をそいつの首に刺す。
忍たまと言えどまだ小さな一年生。 俺は人間だったソレが倒れ行くのを自身を壁とすることで視界を狭めた。
大きな瞳に雫を溜め俺の名を呼んでいる。
「早く皆のところに戻れ。さぁ、早く」
「は、はいっ…!」
拙い足取りはまるで赤子のようで、少々心配にもなるが走る先に見えた紫の制服に大丈夫だと言い聞かせて辺りの忍に殺気を送る。
隠しはしない。 この学園に手を出す者は容赦しない。
俺達がこの学園の生徒である限り、それは絶対だ。
それは一年生とてそうだった。 震える体に鞭を打って取り出したあの子の手には手裏剣を構えていたのを俺は知ってる。
「覚悟は出来てるか」
瞳孔が開いていくのが自分でも分かった。 数人の気配が俺に向かってくる。負けはしない。 何故なら俺は彼女に稽古をつけてもらっていたのだから。
彼女を守るためとつけたこの力は必要なくなった。 でも使い道は何にでもある。
その選択肢が、忍術学園の後輩を守る。
十分な理由だろう。 そう自分に告げて走り出した。
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