灰かぶり姫
カリカリカリ・・・・



夕日が差し込む、放課後の教室。

優佳と悠太、2人で読書感想文を書いている





・・・はずが



「だからお前は!!めんどくさいからって、2行も3行も隙間
開けんな!」

「というより、本当に悠太くん桃太郎の感想書くんですか?」

「なら、さるかに合戦でもいいけど」

「そういう問題じゃなくてですね・・・」

『なんか、マジメに吾輩は猫であるを書いてる自分がバカらしく
なてきたなあ・・・』

「じゃあ、ゆうちんはシンデレラにでもする?」

「いやー、優佳は白雪姫、ってかんじじゃない?」


「お前ら、ちったぁ静かにしろーーっ!!」



一番うるさいのは要だよ、というつっこみは皆心の中にしまう。


「というか、君たちはなんでここに・・・」



何気ない悠太の質問だが、要、千鶴、春の3人は固まる。



「そ、それはーー。おい、子ざる!
(そりゃあ)」

「え!俺!?・・いや、暇なんで、うん、暇だからさ!
ね、春ちゃん?
(2人の関係がどうなってるか知りたいからに決まってるだろ!)」

「え?あ、はい!そうです!
(とは言えませんよね・・・」




本人達は、がんばって普通に話えいるつもりかもしれないが



(俺と清水さんの関係が知りたいわけね)


勘がするどい悠太にはバレてたり。

この前の、授業を2人で無断欠席したのが気になっているのだろう。


(君たちが想像しているような事は一切起こってないけど)





『あ、そういえば──』

「「「え!?」




『桃太郎は、実は奥が深くて・・・。
って、なんでみんなそんながっかりした顔になるの?』


「いや、人間の関係も深いかな、ってね」



優佳が悠太との関係にでも話だすかと思った一同は、肩を
落とす。



「で、優佳その続きは?」


『あ、うん。
桃太郎は実は奥が深いお話でね。
昔、川はあの世とこの世をつなぐ道だと言い伝えられてね。
その川から流れてきた桃太郎は実は、死者の使いじゃないか、って』


「また昔話にしてはダークな・・・」


眉をひそめる要。


『ほかにもあるよー。
さっき橘くんが言ってたシンデレラだって』

「ええ!?あの純真無垢なシンデレラに何がっ!?」

「お前はシンデレラと知り合いか何かかよ・・・」



『シンデレラ、って結構いろんなパターンがあってね。
今から私が話すシンデレラはグリム童話なんだけど。
そのお話では、魔法使いの変わりに鳥が出てくるの』

「ほっ。純真無垢純、純真無垢・・・」


『でね、お城にいくまではいいんだけど。
12時の鐘が鳴って、シンデレラは急いで走ったからガラスの靴が
脱げたことになってるよね?
でも、グリムでは王子様がベニを塗ってて、あらかじめ
脱がせやすくしてたからなんだって』


「計画的犯行だね」


「でも、そこまでしてシンデレラにまた会いたいと願った王子様は
純真じゃん!」


『王子様は靴のサイズとぴったり会う人を探してね。シンデレラの家にも
来たの。
それで継母たちが履いて、靴のサイズ合っちゃったのね』


「なんでっ!」


『足を切ったから、だよ。
結局、ストッキングが赤く染まってたから気づかれたけど』

「そこまでして玉の輿になりたかったんだね、継母達」



春と要と千鶴は、すでに顔が真っ青だ。



『それで、見事シンデレラがあの時の人、って王子様が分かって。
盛大な結婚式をあげたのね。
で、その時に最初にでてきた鳥が口ばしで、継母達に復讐のため
継母達の目をひと突きしちゃうの。
以上、シンデレラもとい、灰かぶり姫のお話』


「なんで、お前はそんなんを知ってるんだよ・・」

『強いて言うなら趣味、かな』

「・・・またえげつない趣味をお前は・・・」

『そうー?』




そんな感じでなんやかんや1時間後





「終わった」

『私もー』

「じゃあ、出してどっか行こーぜ!
俺、たこ焼き食べてー」



読書感想文を提出して、6人は学校をあとにした。


結局、3人はグリム童話で話をそらされ、最初の目的は
忘れていた。








──職員室──




「・・・」


東先生は原稿用紙を見ていた。

その顔は、少しこまっている。

原因は、2人の読書感想文の内容にあった。



《昔話について   浅羽悠太》

昔の人はえげつないなあ、と思いました。




その下は、桃太郎とシンデレラの本当の話的なのが書かれているし




《吾輩はねこであるを読んで  清水優佳》

☆その猫の名前候補




と書かれており、その下にはねこの名前候補が
ずらー、っと書かれている。




「・・・これは、補習にでも来てもらおうかな」


ため息をつく東先生だった。



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