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「じゃあ行ってくるよ」
「うん、気を付けて」

 私の返事を聞いた彼の目が丸くなった。言わんとしていることはわかるから、あえて訊かない。そして、彼も目を少し開いたことによって私がそれの意味を理解したのだと知っているから、何も言わない。

「ありがとう。奥さんも気を付けてな」

 軽いキスをして、彼が笑う。いとも簡単に開いて閉まるドアに胸がちりちりした。これが家族になったということだとしたら、実にわずらわしい気持ちの変化だ。家を一ヶ月離れることなんて今までに何度も経験している。それなのに、今更。



寂しいなんて言えない





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