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 私の意識が別の何かに向けられるのを、彼はいつも恐れている。何年付き合っても自分に自信が持てないのだそうだ。しかし、そのくせにこうも思っている。ミョウジナマエという女は少し優しくすれば機嫌が直るちょろい女だと。

「旭くんのずるいとこ、」

「うん?」
「…なんでもない」
「えっ、なに?」
「なんもないってば」
「怒ってる?」
「…怒ってる」

 そして、私はそんな彼に嫌いと言うことすらできない。



愛する臆病者


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