緑色の長い髪が太陽に反射してきらきらと輝く。目の良さが自慢の私には彼のまつげの長さも、髪同様に癖のある性格も百メートル先からよく見えていた。一目惚れをしたわけではない。あまりにも目立つ風貌だったため、意識を奪われていたのだ。
私の無遠慮な視線に気が付いた彼と目が合った。どちらもそらさない。きっと見られることには慣れているのだろう。彼は目をそらしはしなかったが、そのまま友人らしき巨漢に呼ばれて部室棟の方へ行ってしまった。
巻島先輩はそのときのことなんて覚えていないと言った。それを都合よく照れ隠しの嘘だと思うことにして、私は今日も緑の髪の毛が風に遊ばれるのを眺めている。
あひみての のちのこころに くらぶれば
むかしはものを おもはざりけり
権中納言敦忠
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好きな人と両思いになった後の恋しい気持ちに比べたら
昔の想いなんてないも同然のものだったのだなあ。
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