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「今まで、ありがとう。体に気を付けてね」

呆気なく去っていったアイツの残り香もすぐに消えてしまった。けれど部屋中のあちこちにアイツの面影がちらついて、オレは布団に潜り込んだ。いつからだろう、すれ違っていたのは。オレたちは離れるべきじゃなかった。

ほんの少し意見が食い違うだけで喧嘩するようになったのは離れ離れになってからだ。しかしその以前、呪いにかかったように一緒に居て、二人で一人という錯覚に溺れていたのがそもそもの発端だったのかもしれない。

頭上のぬいぐるみが笑っている。耐えられず放り投げようとして、アイツの存在に気付く。ぬいぐるみに、クッションに、黒のジャケットにアイツがいる。どこかしこにアイツの亡霊がいてオレに手を振る。
全部捨ててしまえればいい。この部屋にあるもの全て、オレ自身さえも。

いらない、何も、捨ててしまおう。

アイツを探すオレも、見つけて傷つくオレも。全部、全部、全部――



LOVE PHANTOM