黒髪の盗人

「泥棒だーーー!!捕まえろっっ!!!」

肉屋の店主の怒号が朝の町に響く。店主の視線の先には素早く人混みを駆け抜ける黒髪の男。

「ボヤッとしてる方が悪いっての。こっちは命かかってんだよ」
男は盗んだ肉や果物を脇に抱え、余裕の表情で逃げていく。

「待てティキっっ!!ワシをおいていくな!」
ティキと呼ばれた男が振り返ると、小柄な男がティキの数十歩ほどうしろで息を切らしながら走っていた。

「…ワイズリー、お前とろいんだよ。」
「ワシは頭脳派なのだっ!!走るのは得意ではないのだっ!!」
店主がもう見えないほど後ろにいることを確認し、少し立ち止まって待ってやる。頭でっかちでたまに足手まといになることもあるが、ティキにとってこの小柄な男、ワイズリーは幼い頃から行動を共にしてきた相棒だ。



ティキは物心ついたころからひとりぼっちだった。父親は誰だか知れないし、母親は自分を生んでまもなく死んだ。この貧しい町でそんな子供は他にもたくさんいた。盗みは他の子供がやってるのを真似して覚えた。そうでもしないと生きていけなかったのだ。
ワイズリーとは店の店主に捕まりそうで危なかったところを助けられてから仲良くなった。体力は全然ないし喧嘩も弱いが、ティキと同じ境遇であるのが信じられないくらい頭の回転が速い。2人はお互い協力してないところを補いあって生きてきたのだ。

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