魔法のランプ ![]() ![]() ![]() 「……すげーな」 ティキは目の前に広がる光景に感嘆の声をあげた。 洞窟の奥には金銀財宝が海のように辺りを覆っていた。どうやらワイズリーの情報は本当だったようだ。 「これ一個でいくらするんだ?」 ティキは別に大金持ちになりたいと思ったことはない。それなりに自由に生きていければ十分だと考えているような無欲な青年だ。 だが楽して生活資金を得られるならそれは願ってもないことだ。自然と手が財宝へと伸びる。 「いかん!」 ワイズリーの声に手が止まる。 「ここの財宝に手を振れてはならん。何が起こるかわからんぞ。」 「良いか?ランプだけを持ち帰るんじゃ。決して他の財宝に触れてはならん。」 いつになく真剣なワイズリーの言葉に、ティキは静かに頷いて財宝から離れた。 こういうときのワイズリーの忠告は聞いておいた方が吉だと経験上わかっている。ティキはワイズリーに全面的な信頼を寄せているのだ。 「これがランプか」 他の金銀財宝と違い古びて煤だらけのそれは、洞窟の更に奥にひっそりと存在していた。 見た感じただの汚いランプにしか見えない。変わった彫刻が施されているわけでもないし、何か特殊な機能があるようにも見えない。もはや本来の役割すら果たしてくれなさそうだ。 何故こんなものを欲しがるのか、ティキには到底理解出来なかったがそんなことはどうでもいい。このランプをあの男に渡しさえすればティキは晴れて自由の身なのだ。 「帰るぞワイズリー」 目的を果たしたティキはそういって足早に来た道を戻る。ワイズリーの忠告通り財宝には手を出さない。 「ま、待てティキ!ここはどうも歩きにくくて」 ずるっ 「わっ!」 「あっ、ばかワイズリー!!」 出張る岩に足をとられてこけそうになったワイズリーは、とっさに傍らにあった金の銅像に手を触れてしまった。 ゴゴゴゴゴ…… 途端に洞窟中に不穏な音が響き渡ると共に天井の岩が崩れ落ちてくる。 「逃げるぞ!!」 「駄目じゃ入り口が塞がっておる!!」 シュルッ どこか出られるところがないかと辺りを見渡しているとふと手が軽くなったことに気づいた。 「ご苦労様です。ランプは確かにいただきましたよ。もうあなたたちに用はないのでそこで財宝と一緒に眠っていただいて結構ですよ。」 声の主に目を向けるとそこには高台からこちらを見下ろす白髪の男。暴風で被っていたフードがめくれ、現れたその顔は不敵に笑う齢15ほどの少年だった。 「あのガキ!嵌めやがったな!!」 「鬼!!悪魔ーーー!!」 「いたっ!!」 腹いせにワイズリーが投げた石が少年の額に命中し、反動でランプが下に落ちてきた。 「でかしたワイズリー!!」 運動神経の悪いワイズリーがねらって当たることなどまずない。完全にまぐれだ。 「にしてもきったねーランプだな」 岩に閉じ込められたティキ達の手元には煤だらけのランプがひとつのみ。 自分達を騙した少年に少しの報復を果たしたところで状況は変わらない。 とりあえずランプの汚れが気になったティキは手持ち無沙汰に自分の服で拭ってみた。 ボンッ 「「わっ!?」」 「こんばんワvあなたですか我輩を呼んだのハv」 (15/24) |