魔のひそむ洞窟

「怪しい男じゃ、罠かも知れんぞ。」
後ろからこそっとワイズリーが声をかけてくる。


今ティキは白髪の男の交渉に応じ、牢から出されて男に案内されるままに歩いていた。

いちかばちかの賭けだった。国の監視する牢からなんてそう簡単に抜けられるものではない。店の店主から逃げるのとは訳が違うのだ。
この男が何者なのか、なぜ鍵をもっていたのかは知らないがたとえリスクがあったとしても出られる機会があるなら逃すわけにはいかない。ティキは慎重派のワイズリーとは違い少しでも可能性があればそれにかける、そういう男だ。



「ここです。」

聞こえた声に顔を上げれば、そこには不気味な洞窟があった。

「この中に入ってランプをとってきてください。ランプを渡してくれたらあなたを自由にしましょう。」

白髪の男はそう言って笑った。相変わらず顔は見えないが雰囲気でわかる。

「ティキ、この洞窟は危険じゃ。何百年も前の盗賊の財宝が眠っているといわれ何人か財宝目当てで洞窟に入っていたようだが生きて帰ってきたものは一人もいないそうじゃ。中に恐ろしい魔物が住んでいるとも言われておる。」

後ろから小声でワイズリーが引き返すよう説得するのを耳にしつつ、ティキは勝算があるか考えた。





*****


「い〜や〜じゃ〜!!何故ワシまで行かねばならんのだっ!!」

ティキはワイズリーを引きずりながら洞窟の中へ入っていった。

「つれないこと言うなよワイズリー、俺ら何でも2人で乗り越えてきただろ?」


洞窟の奥からは低いうなり声のような不気味な音が聞こえた。

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