白髪の男


ガシャンッ



「え?何コレどういうこと?」


疑問をそのまま口にしてみても目の前には鉄格子があるだけで誰も答えてはくれない。

確かにティキは日頃盗みを働いて生活しているし罪がないと言えば嘘になる。
だが自分を捕まえたのは国の直属の兵だ。あんな見捨てられた町に国の兵が来ること事態普段ならありえないことだし、まして国が動くほど大きな犯罪を犯した覚えなんてない。


それに、


「王女様って……?」



「おぬし、相手が誰かも分からずに連れ回しておったのか」
「!」

聞きなれた声に辺りを見回せば小さな格子の窓からひょっこり顔を出した相棒の姿にティキは目を見開いた。

「ワイズリー、お前今までどこ行ってたんだよ」
「ワシとて常に暇なわけではないわっ!…………それはそうと、どうやらワシのいない間に面倒事に巻き込まれたようだのう。」



「ぬしが連れていた少年は間違いなくこの国の王女じゃ。」
「どういう事だ?」

少年は確かに中性的な顔立ちをしていたが声は女性にしては低すぎたし、本人も男として振る舞っていた。
その少年がこの国の王女、ティキの足りない頭では到底理解できそうにない。


「よいかティキ、王室には複雑な事情がつきものなのじゃ。まぁいずれにしろワシらとは違う世界に住む人間じゃ。もう会うこともあるまい。」

「……。」

違う世界に住む人間……少年が本当に王女だというのなら確かにそうなのだろう。ただ一度会っただけなのにあまりにも遠い存在であるという事実を突き付けられてティキはもどかしさを感じた。




「そこのお方、」

ふと牢の外から声が聞こえて振り返ると、そこには小柄な男がいた。フードを深くかぶっていて顔は見えないが、フードからのぞくその髪は白く、老人のようにも思える。



「頼みを聞いてくださるなら、あなたを解放しましょう。」


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