出会い

パシッ


自分の足を過信しすぎて隙があったのか、後ろから誰かに腕を捕まれた。

「それを店に返せ。」

ティキは足に自信のある自分が誰かに追い付かれたことにも驚いたが、その声を聞いて更に驚いた。

自分よりずっと若い、少年の声。
顔はフードで隠れてわからないが、自分の腕をつかむその手はずいぶんと華奢だ。

「あんたには関係ないだろ。あのさぁ、こっちは命かかってんの。さっさと離してくんない?」
「ほしければ買えばいいだろ。盗みはいけないことだ。」
「はぁ?」

ティキはあきれて言葉が出なかった。なんでこの町にこんな世間知らずのぼっちゃんがいるんだか。



「あいつだっっ!!捕まえろ!!」
「!!…ちっ…………」
少年に気をとられているうちに店の店主に追いつかれてしまった。

ティキは長年かけて編み出した『絶対に捕まらないルート』を通って逃げ切った。


『くそっ…どこ行きやがった!』
『あいかわらず逃げ足の早いやつだ…!』
「フンッ……誰が捕まるかよ。」
高台から追っ手を見下ろしたティキは余裕の表情で笑った。

「…で?

何でアンタはついてきてんの?」
「!!」
ティキのすぐ後ろには先程の少年がいた。




『あいつだっっ!!捕まえろ!!』
『!!…ちっ…………』

実はあのとき、店主の後ろには国の護衛兵がいた。
本来城から離れたこんなところまで国の護衛兵がやって来ることはない。

自分を探しに来たのだ、ユウはすぐに気づいた。

とっさに身を隠そうとしたがどこへ行けばいいかわからず、素早く裏道に入っていった泥棒男に付いてきてしまったのだ。




「…………。」
「…フードで顔なんか隠して、少年こそなんか後ろめたいことでもあんの?」

バサッ

「………っっ!!」
「!」

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