彼にしては割と真面目な話
クダリさんと結婚しま、す?
私の実家へ向かう道。
さむいねー、と全身真っ白の人が真っ白の息とともに吐き出した。
そうですねー、私も白い息とともに答えた。
こんなやりとりを、2年前にもした。
『さむいねー』
『そう、ですね?』
『君のこと好きだよ』
『え?』
バトルサブウェイで私が初めてクダリさんと会ったときに、告白された。
急に、知らない人に好きだよ、なんて言われて、私は『あー、ズルッグのことですか? 私も好きですよー』とか上手く返せる人ではなかった。
私の幼馴染の女の子はそこそこ強いトレーナーで、私は彼女がバトルサブウェイへ通うのによく着いて行った。けれど私はポケモンバトルにはあんまり興味が無くて、むしろズルッグが好きです、みたいなよくわからないヤツだった。あ、ヤツである。
そして幼馴染が挑んだバトル相手のズルッグを見て、「私のズルッグの方がかわいい」とぽろっと言ってしまい、ケンカになった。そのとき仲裁してくれたのがクダリさんで、一緒に外へ出て飲み物を買ってもらった。寒い日だったから、暖かいミルクティーを買ってくれたときは、ちょっとかっこいいなと思った。
今は、とってもかっこいいなと思ってる。
いきなり告白されて驚きはしたものの、別に嫌いとかうざいとかきもいとかそんな感情は抱かなかったので、幼馴染に着いて変わらずバトルサブウェイに顔を出した。
「初めてクダリさんのバトルを見たとき、バトルってかっこいいんだって思いました」
「うん、楽しいよ」
ちょっと会話がかみ合わないのはもう慣れた。
「急に告白するようなよくわからない人なのに、かっこいいなって思いました」
「ありがと」
私の幼馴染とクダリさんとのバトルを見た。クダリさんは強かった。それはもう信じられないくらい、お前何者やねん、と言いたくなるくらい。
『ズルッグより好きかも』
「僕はあのとき初めてズルッグに勝ったんだよね」
「ああああああごめんなさい!」
私は告白のしかたを! 間違えたのだ!
彼のバトルを見るまでは ズルッグ>>>>>クダリさん だったから。正直な感想だったんです、と言いそうになってあわてて飲み込んだ。ズルッグに「フォローになってない」と脳内でかわらわりをされたから。
「うん、嬉しかったよ」
クダリさんはそぉっと私の手の甲に、自分の手の甲をぶつけた。冷たい。
これはクダリさんの「手をつないでほしい」合図。クダリさんは私が手を握っていてほしいタイミングを上手いこと察してくれる。たとえば今。
「……あーやっぱり怖い!」
「僕も君のお父さんに会うのすごく怖い」
もしかしたら僕のお義父さんになる人だけど怖いね。
ぎゅ、と手を握るとクダリさんが呟いた。
「前から思ってたんですけど、クダリさん指細いです」
「君の方が細いよ」
君の方が、君の方が。何と比べても結局クダリさんが選ぶのは私なのだ。
結婚の相手も、私なのだ。
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企画サイト白線様へ提出します。
夢主ちゃんのお父さんに「僕にズル……間違えた……娘さんをください!」って挨拶して、お互いの夢をかなえるお話。のつもり。
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