寂しい、という感情を静雄はあまり感じたことがない。昔から一人でいることが多かったからかもしれないが他人に依存したことがないため、誰かがいないと寂しいと感じたことなどなかった。学生時代はともかくそれ以外は一人で過ごす方が多かった。…だからこそ静雄は認めたくなかったのだ。

「……(死ね、)」

心の中で、ある人物に吐き捨てる。この自分が今、会えなくて寂しいと思っているなんて認めたくなかったから。……だいたい、いつもならしつこいと言っていいほど毎日池袋に来ていたのに、ここ二週間はぱったりだ。最初の何日間はよかった。これで清々したと喜んでいたのだが、一週間を過ぎたころからだろうか急に奴のことがふっと頭をよぎることがある。

「……(携帯に連絡くらいよこせよ)」

メールアドレスも番号も奴なら知っているはずなのに、それすらもかかってこないなんて珍しい。静雄は手元にある携帯を触りある番号を呼び出す。

「……(…俺は……)」

じわり、と頬が熱くなる。…違う寂しくなんかないただあいつが連絡を寄越さないから生きているかどうか確かめたくなったから。決して、奴に、折原臨也に会えなくて寂しくなっている、なんてそんなことは絶対に、ない。
心の中で自分が納得するまで散々言い訳をし、深く息を吸い込む。そして画面に表示されている番号をしばらく見つめた後、覚悟を決めて通話ボタンを押した。

「…………」

コール音が五回。五回鳴り終わったら鳴ったら切る、そう静雄が決めた時。

『もしもし?シズちゃん?』
「あ、ああ………」

どきり、と心臓が高鳴る。久々の臨也の声に少しだけほっとした自分がいて静雄はどうしようもない自分の気持ちに少しだけ苛立つ。

『久しぶりだね、どうしたの?急に電話だなんて』
「…お前が」
『え、何?俺が何かした?…ここ最近はシズちゃんに会ってないからいらいらすることした覚えはないんだけどなぁ………』
「…最近」
『え?……ああ仕事でね。ごめんね最近シズちゃんに会ってないし。寂しくて電話してきたんだよね、ほんっとう可愛いなシズちゃんは!』
「煩いてめえはもう絶対こっちにくるんじゃねえよ死ね誰が寂しいなんて言ったんだこの蚤蟲野郎ッッ!!!!」
『またまたー。寂しくなったんでしょ?…だったら普通シズちゃん電話なんてかけてこないじゃん』
「ッ………」

くすくすと漏れる笑い声とさっき臨也の言った言葉に反論できなかった自分に静雄はますます苛立つ。

「煩せぇ、死ね」
『機嫌悪くした?…ごめんごめん、シズちゃんの声が久々に聞けて嬉しくてさ…つい』
「……」

機嫌のよさそうな声が耳元に響く。舌打ちをしながらも静雄はその声が心地好さを覚える、…少しだけ、少しだけなら自分が寂しさを覚えていたのを認められる気がして

「…なぁ」
『なに?』
「お前、いつ仕事終わるんだよ」
『まだもう少しかかるかな、シズちゃんに会えるのはね』
「…だったら」
『……シズちゃん?』
「今からお前の家に行く」

え、何、なんで?!と耳元で驚き声を上げる臨也を無視して通話を終了をする。あいつの家の前までは行った時はあるが入るのはこれが初めてだった気がする。…まぁ、なんだっていいか。とにかくあいつの家に行ってたまには抱きしめてやろうか、…なんて浮かれた考えをしている俺は多分あいつに相当毒されているのかもしれない。










きみ不足が深刻です / Title by 確かに恋だった

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