「(………会いたいなぁ、)」
比較的簡単な仕事を黙々とパソコンで処理していく新宿の情報屋はぼんやりと思う。
「(…………あれ?……んー……、いつもなら別にこんなこと思うことはないんだけど………んんー?)」
気付くと腕を組みながらパソコンを睨み付けていた。なんでだろう、今日は、本当に会いたい。
「なんでだろなぁ……」
「何が?」
「急にシズちゃんに会いに行きたくなった」
「……仕事は?」
「………」
有能な秘書は俺をじろりと睨んだあと溜息をついて自分の作業を再開させる。……そんな彼女を見てさすがにここで、抜け出したらただじゃ済まされないような気がする。
「…ふぅ」
…ま、しょうがないか。俺も溜息ひとつ吐いて仕事へ意識を向ける。…あ、その前にシズちゃんにメールしとこ。
♪〜……♪〜
メールの着信音が静かな部屋に鳴り響く。静雄は携帯を開き、メールを見ようとする、が宛先人の名前を確認したとたん、ぴたりと動きが止まった。
「……臨也?」
珍しい。と素直に静雄は思った、臨也はメールや電話等で静雄に滅多に連絡を入れない、会いたくなるとこちらの事情など知らずにあちらが勝手に静雄の部屋に上がりこんでいるから(ちなみに合い鍵なんて物は渡していない)臨也が勝手にそんなことをするから本当に連絡をよこすだなんて、これはかなり珍しい。
「…………」
このままメールを消したい衝動に静雄はかられるが消したら消したで、ものすごく面倒くさいことになりそうな気がしたので、渋々メールを開封する。
「………」
そして、静雄はやはりこのメールは開かずに消せばよかった、と後悔した。自分の頬に熱が集まるのがわかる。
珍しく回りくどい言葉などなく臨也のメールはたったの一行。
『会いたい』
「………死ね」
なんなんだよ、コイツのメールは。溜息を一つ吐き、もう一度メールを見る。じわじわと頬が熱くなり息をするのが少しだけ苦しくなる。……この感情がなんなのかを静雄は認めたくはなかった。けれども
「あー…くそ……」
…明日。明日になったら仕事の帰りに臨也の家に寄って行こうか、なんて考えてる自分がいてどうしようもなく笑いが込み上げてきた。