「シズ ちゃ 」

それ以上の言葉は紡げないのか、折原臨也はひゅうと息を吐いた。そんな臨也の姿を平和島静雄は満足そうに見つめていた。

「……はは。随分みっともねぇ恰好だなぁいーざーやーくーん?」
「そ だ は 君 に 」

臨也はそんな嘲笑などには目にもくれずにゆらりと立ち上がる。

「ッ…?!」

正直のところ臨也の体はもう瀕死の状態に近かった。今の臨也は口からと血を吐き、周囲の地面はゆっくりしかし、確実に臨也の血で染まっていった。それなのに臨也は立ち上がり静雄をしっかりと見据える。…けれどもこの期に及んで静雄に何をするのだろうか?自然に体を強張り静雄は警戒体制に入る。

「………なんだよ?今更命請いか?」
「あはは、なら……… い の ね 」

聞こえない。(臨也は何を伝えたいのか、残念ながら静雄にはその思考を半分以上を理解することは難しかった。)そして臨也には話をするのも無理なのだろう。言葉を発する度にごぼごぼと血が塊の様にどす黒くコンクリートを染めてゆく。そんな姿に静雄は何故か酷く動揺した。

「(…………違う)」

ぽつりと浮かんだ否定の言葉。

「(違う違う違う違う違う違う………ッ!!!)」

静雄の知っている折原臨也はこんな姿じゃ、ない。酷くボロボロの惨めな姿なんて他人に決まっている。―――――――彼はもっと皮肉な笑みを浮かべて静雄が腹を立つ言の葉を並べて―――――そして――――そしてそしてそしてそしてそしてそしてそして、うまく言葉が頭の中で紡げない。何故、どうして、そんな顔で、

「(………笑うんだよ)」

それも、無邪気に。本人は気付いていたのかはわからない。けれどもそれが彼の知る折原臨也の姿の筈ではないのに。

「ねぇ シ ん 俺は、ね」

優しくこちらを見て安心したように微笑みを浮かべる臨也なんて今までの付き合いで一度もなかった。掠れて半分も理解できない臨也の言葉。しかしながら皮肉な事に最後の最後に聞こえてしまったのだ。そして静雄は理解する何故今まで彼―折原臨也を、彼の気持ちに気付けなかったのかを。

「………俺も、」

もう既に冷たくなっている骸に話し掛けるのは無駄なのかもしれないけれど、それでも彼は答えなければならなかった。

「……好、きだっ た 」

呟いて彼は静かにその亡殻を抱きしめた。













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