「例えば、さ」
俺が死んだら君はどうする?
俺はシズちゃんににこりと笑いかけながら問い掛けた。一方のシズちゃんは大きく目を見開くと俺から目線を反らし、そのまま細かく身体を震えるだけで何も言わない。そう彼は何も、何も言わない。…………いや、何も言えないだけか。そんな彼はか弱く、そしてとても愛おしい。前のシズちゃんだったらきっとそんな問い掛けにも耳をかさずに俺を殺そうと殴りかかってくるはず。けれども今のシズちゃんは絶対にそんなことはしない、だってそうなるように俺が仕掛けたから。
「シズちゃん」
にこりと笑って俺は両手で優しく彼の両頬を包み込みその唇にキスをする。そんなことをしても彼はもう怒らない、むしろ安心したように色気を含んだ瞳で俺を見るだけだ。………あぁ、シズちゃんはもう俺に許してしまっている。身体も心もなにもかも。
「(………ま、最初からそうさせるつもりだったから別にいいんだけどさ)」
だって俺も、もう彼なしでは生きてはいけないから。彼がいなければこの世界など、どうでもよい。人間、という種族よりも平和島静雄という人物に執着してしまったから。
けれどそこまで思ってしまうほど駆り立、ててしまうこの感情の、名 は ?
(恋でも、ましてや愛情でもない俺達の関係は)
依存にも近い、狂気めいている感情。
「…愛しているよ」
そんな安っぽい言葉を吐き出して彼を繋ぎとめられるなんて思っている俺は既に狂っているんだと自覚する。彼もまた自覚しているから俺の傍にいるのかもしれないけれど。