シズちゃんが女体化して『静香』という女の子になっていますので、注意です!







映画館から一組のカップルたちが出てきた。男のほうは眉目秀麗といった感じで、女のほうはなぜかバーテンダーの姿(しかも巨乳)はっきりいうと、珍しい格好の二人組みといえる。

「あの映画、面白かったねー。見て正解だったよね」
「まぁな……」

小さく彼女が呟く。そんな彼女の姿を見て、男のほうは優しく微笑み手を差し伸べた。少し照れながらも彼女はその手を握り、歩き始めた。








「シズちゃんはあの映画のどこが面白かったの?」

そう言って臨也はあたしに笑いかけた。…………正直、認めたくないが格好いい。

「臨也は?」

その気持ちに気づいて欲しくなくて短めに答える。バレたらなんて言われるかなんて、いくらあたしでも分かるようになった。

「俺?んー、そうだなー……」

案の定臨也はそう言って、どこが良かったか細かに話し始める。こういう所がすごいよな……、こいつって。そう思いながらあたしは臨也のことを眺める。とても楽しそうに、時々あたしの顔を見てくるから少し、ドキリとしてしまうのが
恨めしい。けど、臨也が楽しそうだったからあたしも珍しく笑って、臨也の話を聞いていた。









俺が話し始めて十分くらいたった頃、静ちゃんが急に足を止めた。

「っと、どうしたのしたの?シズちゃん」
「あ、いや……」

そのまま黙ってシズちゃんは、目の前にあったガラスのウィンドウの前で立ち止まり、それを眺めていた。その中にはいまどきの女の子が好きそうな洋服が飾られてある。へぇ、シズちゃんもこういうの好きなんだなー。なんて、シズちゃんを見ていたらいいこと思いついた。

「欲しいの?」

俺は笑いながら、シズちゃんに問いかける。

「……でも、似合わないし………」

ああ、そっかシズちゃんって洋服コレ(バーテンダー)しか持ってなかったな、欲しいけど、似合わないかもって思ってるんだー……。こういう時シズちゃんってやっぱ女の子だなって思う。うん、普通に可愛い。
「だったら、俺が買ってあげる」
「え?!……い、いや…、そんなことは……、それにこれ高いし………」
「いいって、いいって、彼氏が彼女になんかプレゼントするのは当たり前だよ?それに、シズちゃんにまだ何にも贈ってなかったから、いい機会だよ」

お金も持ってるし、俺は笑って強引にシズちゃんのことをそのお店へ連れ込んだ。


















「お似合いですよ」

女の店員が笑って静香を臨也の前に立たせる。

「あの、臨也?」

臨也の前にきた静香だが、臨也の様子がおかしくて首をかしげる。ぽかんと驚いたように、ただ静香を見つめるだけで何も言ってくれない。やっぱり似合わないのだろうか、悲しくなり

「あたし、やっぱり着替えてくる」

と言ったとき臨也はあわてて静香を止めた。

「違う!違うって!!すっごく俺が思ってたより似合ってるから、驚いただけだって!!」
「……ほんと……?」
「本当だって!」

きっぱりと力強く言われようやく静香も安心したように笑う。

「よかった、似合わないって言われるかもしれないって思ったから………」
「そんなことないよ!じゃあ、このままお店でよ?」「は?」

今度は驚いて静香が臨也を見つめた。

「何のためにきたと思ってるの?会計はもう済ませたし、タグも切ってもらったんだから」
「バーテンのやつは?」
「この袋の中、俺が持つからいいよ、だから行こ?」
にこりと微笑み臨也と静香は店を出た。










「……………」
「……………」
「………………」

二人とも黙りながら(けれど手はしっかりとつないで)歩いている。

「(困ったなぁ……)」

苦笑しながら、臨也は静香の方を見る。ひらひらと、ミニスカートをなびかせて歩く静香にどう話しかけていいかわからずにいた。

「(ここまで可愛いなんてなぁ……)」

動揺してる自分に気付き、ますます臨也はどうしたらよいか、わからなくなった。一方、静香は静香で話しかけてこない臨也に不安を感じていた。

「(………やっぱり、似合わなかったかな)

溜息をつきながら自分の穿いているスカートを見る。店員は金髪の髪によく似合うと、今流行りのピンクのふんわりとしたワンピースを渡された。あまり(というか滅多に)穿かないものを着て歩く自分がなんだか滑稽に思えてきた。

「(臨也はああ言ってたけど……)」

不安になりながらも、黙々と歩き続ける二人。


「「((何て話しかけようか………))」


「くしゅんっ!」
「シズちゃん?」

臨也は静香を見た。どうやら寒いらしく、ブルッと震えた後臨也のほうに向き直った。

「あ……、何?」
「別になんでもないけど……、もしかして寒いの?」
そういえば今日はかなり寒くなると天気予報で言ってたっけ……、と臨也は呟いた。

「大丈夫?」
「へ、平気………」

大丈夫といいつつも、寒いのか震えながら手を繋ぎ直す。そんな静香を見て臨也はしばし考え込み、それからいいことを思いついたかのように笑う。

「じゃ、これ着てて」
「え?」

ふわ、と静かの肩にかけられたのは臨也がいつも着ている黒のコートだった。

「暖かいでしょ」

静香に、にこりと笑いかけそのまま強引に手を引く。
「あ、でも…、臨也が……」
「いいって、俺そんな寒くないし。シズちゃん寒そうなの嫌だし」

だから、と言葉を続ける。
「だから着てて」
「うん……ありがと……」

珍しく素直にお礼を言うと、臨也は顔を赤くしそっぽを向いた。そんな臨也に静香は微笑むと、握っている手を強く握り締めもう一度「ありがとう」と言った。
















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