ギアアアアアーーとおぞましい鳴き声を上げながら線路の上を浮遊する、紅紫の羽と新緑色の体躯を持つドラゴン───ホバードラグ。

線路に立つ13班を笑うように空を飛び回るホバードラグにジークのエイミングショットが命中し、体制を崩したホバードラグにケイのアタックゲインにより強化されたアインの刀が青く光る。

「ぶっ飛べぇっ!!」

抜刀から繰り出された鋭い斬激はホバードラグに命中し、ホバードラグは断末魔の叫びを上げながら天球儀の下へと落ちていった。

「流石だねえ、アイン君。最近また強くなったんじゃない?」

刀を納めたアインのもとへ、ヒュウと軽く口笛を吹きながらジークが歩み寄る。ジークの声に振り返ったアインは、彼の賛辞に照れたように眉を下げて笑う。

「そんな事ないですよ。ジークさんのショットが効いてましたし、ケイのサポートもあったから…」

そう言いながらくるりとケイへ顔を向けたアインは、紡いでいた言葉を切りきょとんと目をまるくする。

何故なら、ケイは戦闘用の青く発光するキーボードを出したまま、ポカンと口を開けた状態でアインを凝視していたからだ。

「…ケ、ケイ…? どうかしたのか?」

アインが恐る恐るといった調子で訪ねると、ケイはポカンとした表情のままポツリと呟いた。




「…アインの腰が……エロい………………!!」





「………………………………は?」


アインの体が、ビシリと音をたてて固まる。
ケイから放たれた言葉を脳が理解できず、手足の動きが停止した。

「あ、それ俺も思ってた。」

トンボ斬りの時のアレ、エロいよねえ。とニヤニヤと笑いながらケイの言葉に乗り出したジークに、更にアインの体が固まる。

「だろ!?あのキュッと捻られた腰、交差された足!!もうあのウエストから腰にかけてのラインが…!!」

ジークの同意を得てスイッチが入ったのか、ケイは目を見開き興奮気味に語り出す。頬は赤く火照り、息も若干荒くなっている。

「俺は袈裟斬りの時が好きだなあ。斬った後膝立ちになるだろ?あの時のお尻のライン、いいよねえ。」

「わかってるじゃんオッサン!僕はその時の掛け声も良いと思うんだよね!「観念しろよ?」って…あのちょっとドヤっぽい所が!!」

「あー、あれいいよなあ。何かこう、良く出来ましたねーって頭撫で回したくなるっていうか…。」

「あと金翅鳥王旋風の時の掛け声!「全員相手だ!」って……!!エロい!!エロいんだよアレ!!アインはそんな事する筈ないってわかってるんだけど…いやさせないけど!!」

呆然とするアインの横で、あまり人様に聞かせられない会話が交わされる。終いには〇〇〇やら****等の自主規制音が聞こえてきた。



ハアハアと息も荒く興奮した様子の青年と、ニヤニヤと良からぬ事を考えていそうな笑みを浮かべるオッサンによって繰り広げられる、自主規制音の鳴り響く会話。とても近寄りづらい…否、近寄りたくない空間がそこにはあった。



アインは納めたばかりの刀の柄に手を掛け、ゆっくりと姿勢を低くし居合の構えをとる。





「……いい加減に……しろーーーーッッ!!!」










ーーー







「…………。」



キリノはフー…、と長く溜め息をつくと手に持った数枚の報告書をテーブルに置き、医務室のベッドに横たわる包帯の塊と化した13班のハッカーとトリックスターをチラリと見、眼鏡を取ると掌で両
の瞼を覆う。


「……頭が痛いよ、全く……」



でもトンボ斬りの時エロいっていうのは同感かな……とボソリと呟かれた言葉は、誰に聞かれる事もなく空気に溶けていった。





end
ーーーーーーーーーー


あの腰たまんないです。もうニヤニヤしちゃうZE。




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